\ 動画で見たい方はこちら /
インドへ進出している日系企業は、どのくらいあるのでしょうか。私たちがニューデリー周辺を歩いたとき、米国系のチェーンは見かけても、日本でおなじみの店舗は想像ほど多くありませんでした。
ところが、JETROの集計では、2024年10月時点でインドへ進出している日系企業は1,434社、拠点数は5,205あります。企業数だけを見れば、決して少なくありません。
なぜ、数字と街で受ける印象に差があるのでしょうか。今回はインドでの現地視察をもとに、日系企業の業種構成、小売・外食が直面する価格と現地化の課題を整理します。さらに、貸主が海外ブランドや日本での実績が少ない新業態をテナント候補として見るときの判断軸へつなげます。
- インドへ進出する日系企業の数と業種構成
- 企業数の割に日本の店舗が少なく見える理由
- 小売・外食が海外で直面する価格と現地化の課題
- 貸主が海外ブランドや新業態を審査するときの5項目
- 海外ブランドから入居相談を受けた貸主
- 日本での出店実績が少ないテナントの審査に迷っている方
- 新しい業態を空き区画へ誘致したいビル・店舗物件オーナー
- ブランド名だけでなく継続性まで確認したい方
インド進出の日系企業は1,434社。それでも街で店舗が少なく見えた理由
最初の論点は、街で見える店舗と、企業の進出数の差でした。
山谷:日本企業だけでなく、日本でもよく見る海外企業の店舗も、想像していたほど多くない印象でした
くっつー:調べてみると、日系企業は約1,400社進出しています。ただ、業種を見ると製造業が中心なんです
JETROによると、2024年10月時点の在インド日系企業は1,434社です。このうち製造業は708社で49.4%を占めます。一方、宿泊・飲食サービス業は28社、2.0%でした。
| 業種 | 企業数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 製造業 | 708社 | 49.4% |
| 卸売・小売業 | 230社 | 16.0% |
| サービス業 | 235社 | 16.4% |
| 宿泊・飲食サービス業 | 28社 | 2.0% |
この数字からわかるのは、企業の進出数と、消費者が街で目にする店舗数は一致しないということです。 工場、研究開発、IT、法人向け事業などは、街路や商業施設を歩いても見えにくいからです。
日系企業1,434社という数字は、インドへ進出する企業数です。小売・飲食の店舗数やブランド数ではありません。街で店舗が少なく見えることと、企業進出が少ないことを同じ意味にはできません。
現地で見えた日本企業の3つの展開パターン
現地で日本企業の存在を考えるときは、すべてを「店舗があるか」で見ないことが大切です。視察と公開情報を重ねると、小売、店舗以外の事業、自動車では、現地との接点の作り方が異なります。
1. 小売は現地での価格ポジションが変わる
UNIQLOは2019年10月にインド1号店を開き、2026年7月末時点で20店舗を展開しています。日本では日常的に利用しやすいファッションブランドですが、現地の安価な衣料品と比べれば、同じ価格ポジションになるとは限りません。
これはUNIQLOに限らず、海外へ出る店舗全般に当てはまります。本国での「安い」「身近」「定番」という位置づけは、現地の賃金、競合、商習慣によって変わります。
2. 食品・IT・電機は店舗以外の接点も多い
動画では、食品のヤクルトや日清食品、電機のソニーやパナソニック、ITのNTTデータなども話題に上がりました。ホテルの朝食で商品を見たり、看板や法人向けサービスを通じて接点があったりしても、必ずしも路面店として現れるわけではありません。
貸主が企業の出店力を見るときも、会社全体の規模と、店舗事業の実績は分けて確認する必要があります。 大企業であっても新規業態は実証段階かもしれません。反対に、企業名は知られていなくても、運営会社が特定業態で十分な実績を持つ場合もあります。
3. 自動車は早期参入と現地適合が強みになった
業種を変えると、街での見え方も変わりました。
くっつー:インドで最も成功している日本の産業は何だと思いますか?
山谷:自動車ですね。街でもスズキの車をよく見かけました
マルチ・スズキの前身は1981年に設立され、スズキは早い段階からインド市場へ入りました。現在の強さを一つの理由だけで説明することはできませんが、早期参入、現地生産、現地の需要に合う商品づくりを長く積み上げてきたことは重要です。
店舗ビジネスへ置き換えると、本国の商品をそのまま持ち込むのではなく、地域の所得、使い方、好み、運営環境に合わせる必要があるとわかります。
日本の外食チェーンがインドで広がりにくい背景
インドは2025年推計で約14億6,400万人の人口を抱える大きな市場です。ただし、人口が多いことと、日本の飲食店がそのまま受け入れられることは別問題です。
視察中、私たちは日本の牛丼、回転寿司、うどん、ラーメンなどのチェーンをほとんど見かけませんでした。観察範囲は限られるため、インド全土にないとは言えません。それでも、店舗展開の難しさを考える材料にはなります。
現地の日常価格との競争
インドには、手頃な価格で食べられる現地料理が豊富にあります。日本から食材や設備、運営方式を持ち込んで価格が上がれば、現地の人にとって「日常的に選ぶ理由」が必要です。
一度試してもらえる価格と、繰り返し利用してもらえる価格は同じではありません。 話題性だけで初回来店を作れても、日常価格から離れすぎれば継続利用は難しくなります。
食文化・味・利用場面への適合
味付け、食材、宗教上の配慮、ベジタリアン対応、食べる時間帯、家族での利用など、飲食店が合わせるべき条件は多岐にわたります。
重要なのは、日本食を薄めることではありません。何をブランドの核として残し、何を現地の利用場面に合わせるかを決めることです。
インドの飲食チェーン3ブランドについては、Biryani Blues・Vaango・CoCo壱番屋を比較した現地視察記事でも詳しく整理しています。
現地運営を支える体制
海外店舗では、仕入れ、人材採用、教育、許認可、物件探索、商慣習への対応が必要です。ブランド本部に実績があっても、現地で店舗を運営する法人やパートナーの体制が弱ければ、継続出店は難しくなります。
逆に、インド発のブランドが日本へ出店するときも同じです。動画では、現地で食べたBiryani Bluesを日本でも利用したいという話になりました。しかし、商品がおいしいことと、日本で店舗として成立することの間には、価格、物流、人材、契約主体、商圏という複数の確認事項があります。
海外ブランド・新業態テナントを審査する5項目
インド視察から得た気づきを、日本の貸主の判断へ置き換えると、海外ブランドや新業態の入居申込では次の5項目を確認したいところです。
- 誰が賃貸借契約と店舗運営に責任を持つか
- 日本で検証済みの実績はどこまであるか
- この商圏で選ばれる価格と顧客像があるか
- 商品と物件設備が合っているか
- 小さく検証し、継続可否を判断できる計画か
1. 誰が賃貸借契約と店舗運営に責任を持つか
海外本部の会社名だけでなく、日本の契約主体、実際の運営会社、代表者、保証内容を確認します。 ライセンス、フランチャイズ、合弁など、進出形態によって責任の所在は変わります。
2. 日本で検証済みの実績はどこまであるか
既存店の数だけでなく、出店地域、開業からの期間、標準面積、客単価、撤退実績を確認します。日本1号店であれば、海外実績をそのまま評価せず、日本での検証計画と資金余力を見ます。
3. この商圏で選ばれる価格と顧客像があるか
「海外で有名」「人口が多い」では、対象物件の売上根拠になりません。商圏の所得、昼夜人口、競合価格、利用頻度と、予定する客単価が合うかを確認します。
4. 商品と物件設備が合っているか
飲食であれば、電気・ガス・給排水・排気・グリストラップ・搬入・廃棄物処理などが営業の前提です。海外仕様の設備や食材が必要な場合は、調達期間、工事区分、費用負担も早い段階で整理します。
5. 小さく検証し、継続可否を判断できる計画か
初出店ブランドでは、短期間で多店舗展開する計画より、最初の店舗で何を検証し、どの数値を基準に次の出店を決めるかが重要です。貸主側も、賃貸期間、解約条件、保証、原状回復を個別に確認してください。
海外の店舗数や本部の知名度は判断材料の一つです。しかし、日本での契約主体、運営体制、資金計画、必要設備まで確認しなければ、賃料滞納や早期撤退、工事トラブルのリスクは評価できません。契約条件は専門家と個別に確認してください。
大手チェーンへ物件情報を届けたい場合は、店舗開発担当者へ直接提案する方法もあわせてご覧ください。誘致の入口を増やすことと、申込後の審査を丁寧に行うことは両立します。
よくある質問
Q海外ブランドの日本1号店では、どの法人と契約すればよいですか?
実際に賃料を支払い、店舗運営と原状回復に責任を持つ日本国内の法人を確認します。海外本部、国内ライセンシー、フランチャイジーの関係を資料で整理し、必要に応じて保証会社や連帯保証の条件を専門家と検討してください。
Q海外で店舗数が多ければ、長期入居を期待できますか?
海外の店舗数はブランド力を知る材料ですが、日本店舗の継続を保証しません。日本での価格、仕入れ、採用、集客が成り立つか、対象店舗の事業計画と運営会社の資金力を個別に確認します。
Q日本で実績のない業態には、どの資料を求めるとよいですか?
事業計画、月次収支、出店資金の内訳、契約主体の決算資料、海外既存店の実績、日本での仕入れ・採用計画、必要設備の一覧を求めます。海外実績と日本での前提条件を分けて説明してもらうことが重要です。
Qポップアップ出店で需要を確認してから賃貸借契約へ進めますか?
施設・用途・契約条件が合えば、短期催事やポップアップで顧客反応を確認する方法があります。ただし、短期出店の売上が常設店でも再現できるとは限りません。営業時間、設備、販促条件を本出店と比較して評価してください。
Q海外飲食ブランドでは、どの設備確認を優先しますか?
調理方法をもとに、電気容量、ガス、給排水、排気、グリストラップ、防火、食材搬入、廃棄物の条件を確認します。海外製機器を使う場合は、日本の電圧・規格・保守体制への適合も必要です。
Q海外ブランドに向く立地は駅前や一等地ですか?
知名度の低い初出店では人通りが助けになる一方、高い賃料が検証期間の負担になります。ターゲット顧客、来店目的、客単価、販促力から判断してください。店舗立地の基本は、店舗物件における「好立地」の見極め方でも解説しています。
市場の大きさではなく、その物件で続く理由を確認しよう
インドへ進出する日系企業は1,434社ありますが、約半数は製造業です。企業進出が増えても、日本の小売・飲食店が同じ割合で街に増えるわけではありません。
現地視察から見えたのは、店舗展開では市場人口やブランド名だけでなく、価格、顧客、食文化、運営体制、物件との相性が問われるということです。
貸主が海外ブランドや新業態を検討するときも、「有名だから入ってほしい」で終わらせず、誰が運営し、なぜこの商圏で選ばれ、どの条件なら続けられるのかを確認しましょう。
自分の物件にどの業種が入り得るか整理したい方へ、LINE登録者限定で「120業種別 面積リスト」を無料でお配りしています。業種ごとに必要な広さの目安を確認できるため、募集条件や候補業種を考える際にご活用ください。今なら、他にも4個の特典も無料プレゼント中です。