\ 動画で見たい方はこちら /

こんにちは、テナントの窓口のくっつーです。

閉店時に契約書を読み返し、床・壁・天井まで撤去する原状回復義務に気づく店舗経営者は少なくありません。

ただし、現借主の判断だけで内装を残すことはできません。貸主が次の入居者と残す造作を認め、原状回復の扱いを合意できれば、居抜きで引き継げる可能性があります。

この記事では、スナックの閉店相談を例に、貸主へ提示する3つの交渉材料と実務の順番を整理します。

読み終えると、「お願い」だけで交渉せず、貸主にも判断できる提案へ変える方法が分かります。

この記事でわかること
  • 原状回復義務と造作譲渡の関係
  • 貸主が居抜き引継ぎを判断する3つの材料
  • 次の入居者の信用を示す資料
  • 造作譲渡承諾料を検討するときの注意点
  • 不成立時に備えた原状回復の期限管理
この記事がおすすめな人
  • 閉店時のスケルトン工事費が心配な店舗経営者
  • 内装や厨房設備を次の入居者へ譲りたい方
  • 貸主へ何を説明すればよいか分からない方
  • 解約通知を出す前に選択肢を整理したい方

原状回復は「免れる」のではなく、貸主と別の返還方法を合意する

店舗の賃貸借契約に原状回復やスケルトン返しが定められている場合、借主は契約に沿って返還するのが原則です。

造作譲渡を希望しても、買い手を見つけただけでは原状回復義務が消えません。貸主・管理会社へ相談し、何を残し、誰が次に借り、将来どの状態で返すかを合意する必要があります。

国土交通省の原状回復ガイドラインは主に民間賃貸住宅を対象としており、事業用店舗へそのまま当てはめるものではありません。一方、契約条件を当事者が確認し、合意内容を明確にする重要性は参考になります。

国土交通省の案内でも、原状回復条件を契約時から確認し、納得して合意する考え方が示されています。

店舗では特約や工事範囲が物件ごとに違います。一般論で「原状回復しなくてよい」と決めず、契約書、入居時状態、工事承諾書、貸主との協議を確認します。

買い手が見つかっても原状回復義務は自動で移らない

造作売買と賃貸借は別の契約です。次の入居者が審査に通らず、賃貸借が成立しなければ、現借主の返還義務だけが残ることがあります。

売買契約には、賃貸借が成立しなかった場合の解除や費用負担を明確にしてください。

交渉材料1.次の入居者を示し、空室期間を短くできると伝える

貸主にとって大きな関心は、現借主の造作売却額ではありません。退去後の空室期間、次の賃料、建物への影響、滞りなく賃料を払える入居者かどうかです。

そこで最初の交渉材料になるのが、次の入居候補です。

くっつー:貸主へ最初に伝えるメリットは何ですか?

佐々木:次のテナントを連れてきて、賃料収入が途切れない可能性を伝えることです

単に「知人が借りたいと言っている」と伝えるだけでは、貸主は判断できません。希望業態、開業時期、賃料条件、必要工事を整理します。

スナックから次のスナックへ引き継ぐ場合でも、営業時間、音、看板、消防、近隣への影響は確認が必要です。

飲食店なら、排気、臭気、油、ガス容量など建物への負荷も見られます。次の業態が現在より貸しやすいとは限りません。

貸主側のメリットは次のように具体化します。

  • 空室募集の開始を早められる
  • 内装を使える候補へ直接案内できる
  • 現借主と次の借主の間で残す物を整理できる
  • 解体と再工事による建物負荷を減らせる場合がある
  • 新規賃貸借が成立すれば賃料の空白を短くできる

「空室ゼロになります」と断定はしません。審査、契約、工事で時間がかかるため、予定と不成立時の案を示します。

交渉材料2.次の入居者の信用と事業計画を見える形にする

貸主は、誰でも入居させればよいわけではありません。賃料支払能力、業態経験、運営体制、保証条件、建物との相性を確認します。

次の入居候補の経歴や事業計画を示し、貸主が安心して判断できる材料を揃えます。

くっつー:次の入居者が安心できる人だと、何で示せばよいですか?

佐々木:経歴や事業計画など、これまでの経験と今後の運営が分かる資料を用意します

最低限、次の情報を準備します。

資料貸主が確認できること
事業者概要・経歴業態経験、運営責任者
事業計画商品、営業時間、売上計画、資金
法人・個人の情報契約主体、設立、代表者
資金・保証資料初期費用、賃料支払、保証会社利用
工事計画残す造作、追加工事、施工時期
許認可の確認保健所、消防、風営法等の見通し

資料が立派でも審査合格を約束するものではありません。しかし、貸主が懸念を具体的に質問できるようになります。

私自身も貸主側として、申込賃料だけでなく、長くこの場所で営業したい理由や経歴を見て入居者を選んだ経験があります。

価格だけでなく、継続して賃借できる根拠を示すことが、居抜き承諾の土台です。

次の入居者へ原状回復を丸投げしない

将来の退去時に誰がどの状態まで戻すかは、貸主と次の借主の契約で明確にします。

「次の人が全部引き継ぐから大丈夫」という現借主同士の約束だけで進めないでください。

交渉材料3.貸主の負担と承諾条件を金銭面も含めて調整する

次の候補と資料を示しても、貸主が契約変更や調整の負担を感じる場合があります。その場合、承諾条件として金銭を支払う提案も選択肢になります。

ここでは、こうした金銭を「造作譲渡承諾料」として整理します。ただし、法律で一律に定められた名称や相場があるわけではありません。

くっつー:承諾のために支払う金額には相場がありますか?

佐々木:一律の相場はなく、貸主が納得できる条件を個別に調整します

賃料1か月分などを例にすることはあっても、物件、交渉内容、貸主負担によって変わります。最初から金銭だけで解決しようとすると、かえって不信を招くこともあります。

先に次の入居者、空室短縮、工事範囲、契約手続を示し、残る懸念と負担を確認します。そのうえで必要なら、承諾条件を書面にします。

支払う場合は、誰が誰へ、何の対価として、いつ支払うかを契約書へ明記します。造作代金、仲介手数料、保証金、礼金など別の金銭と混同しないようにします。

貸主へ相談する前に揃える7項目

交渉は順番が大切です。解約期限が迫ってから「内装を残したい」と伝えると、貸主も検討時間を取れません。

  1. 賃貸借契約書と解約予告期間
  2. 原状回復・スケルトン返しの特約
  3. 入居時の状態と工事承諾書
  4. 造作・設備・リース品の所有一覧
  5. 次の入居候補の業態と事業者資料
  6. 残す物・撤去する物・不具合の一覧
  7. 不成立時の工事見積と切替期限

造作の写真は、全景だけでなく、型番、年式、動作状況が分かるように撮ります。借主所有でない設備は売却対象から外します。

貸主側から見た居抜きとスケルトンの違いは、店舗閉店後の募集方法と費用感も参考にしてください。

居抜き物件のメリット・デメリットも確認し、次の入居者側の改修費や設備不良まで含めて提案してください。

貸主相談から明け渡しまでの進め方

貸主への相談から明け渡しまでは、承諾と賃貸借の成立条件を確認しながら進めます。次の6段階で整理します。

1.解約通知前に相談の可否を確認する

解約通知を出す前に、管理会社や貸主へ居抜き引継ぎの相談が可能か確認します。秘密裏に買い手を決め、後から承諾を求める進め方は避けます。

2.候補者と造作情報を提示する

次の入居候補の概要、業態、希望時期、残したい造作を示します。貸主から追加資料や工事条件を聞き取ります。

3.入居審査と賃貸条件を詰める

賃料、保証、契約期間、用途、工事、営業時間などは、貸主と次の入居者の間で調整します。現借主が合格を約束できません。

4.造作売買と賃貸借の条件を連動させる

造作売買だけが先に確定しないよう、賃貸借不成立時の解除、手付金、引渡し、原状回復を定めます。

5.承諾内容と返還状態を書面にする

現借主の原状回復義務をどこまで免除するか、貸主が何を残すことを承諾したか、次の借主が将来どう返すかを曖昧にしません。

6.不成立なら原状回復へ切り替える

入居審査や契約がまとまらない可能性に備え、工事発注の最終期限を決めます。買い手探しを続けて明け渡しに遅れないようにします。

貸主の判断材料を先回りして揃える

居抜き相談は、借主の撤去費を減らすお願いだけでは通りにくくなります。

次の入居者、空室期間、信用、工事、契約、不成立時の返還を一つの提案にすると、貸主が検討しやすくなります。

合意書と契約書で曖昧にしない10項目

口頭で「残してよい」と言われても、現借主、貸主、次の借主で理解が違えば、明け渡し時に揉めます。私は、少なくとも次の10項目を書面で確認すべきだと考えます。

  1. 残す造作・設備と撤去する物
  2. 各設備の所有者とリースの有無
  3. 造作代金、支払先、支払日
  4. 貸主が承諾する次の業態と営業時間
  5. 次の賃貸借が成立しなかった場合の扱い
  6. 現借主の原状回復義務を免除する範囲
  7. 不具合・修理・現状渡しの範囲
  8. 引渡し日と鍵・設備の受渡し
  9. 将来、次の借主が退去するときの返還状態
  10. 税金、手数料、承諾条件などの費用負担

造作譲渡契約だけにすべてを書けばよいとは限りません。賃貸借契約、貸主承諾書、三者合意など、当事者と内容に合う書面を専門家と検討します。

現借主と買主の売買条件が、貸主の承諾内容と食い違わないことを最終確認してください。

現借主・貸主・次の借主の責任を分ける

三者の役割が曖昧だと、「誰かが確認すると思っていた」という抜けが生まれます。

当事者主に確認すること相手へ渡す情報
現借主所有、設備状態、原状回復、引渡し造作一覧、不具合、希望日
貸主・管理会社用途、審査、契約、残置承諾募集条件、工事条件、承諾範囲
次の借主事業計画、資金、許認可、改修審査資料、工事計画、希望条件

現借主は、次の借主が営業許可を取れると保証できません。貸主も、残置設備の性能を保証するとは限りません。

誰がどの専門家へ確認するかも決めます。賃貸借と仲介は宅地建物取引業者、契約紛争は弁護士、税務は税理士、雇用は社会保険労務士など、論点を分けます。

貸主へ伝える提案書の構成

口頭相談の後は、A4で2〜4枚程度の提案書にまとめると論点を共有しやすくなります。

  1. 現在の契約と希望明け渡し時期
  2. 残したい造作・設備の写真と一覧
  3. 次の入居候補の概要と業態
  4. 貸主にとっての空室・工事上の利点
  5. 追加工事、臭気、音、営業時間への対策
  6. 審査不成立時の原状回復案
  7. 希望する承諾内容と回答期限

「撤去費が高いから助けてほしい」だけでなく、貸主が比較できる情報を出します。

貸主の利益を誇張せず、空室期間や審査結果が未確定であることも明記してください。

回答を急がせる場合も、契約と工事へ必要な日数を示し、理由を共有します。

提案書の提出後は、質問、回答、変更条件を日付付きで残します。担当者の口頭了解だけで進めず、最終承諾者と書面化の方法を確認してください。

よくある質問

最後に、貸主協議の書面、買い手探し、条件付き承諾、候補者未定、審査中の代金という5つの実務疑問へ答えます。

Q
貸主との協議内容は、どの書面に残しますか?

A

相談記録だけで済ませず、誰が、どの造作を、いつまで残せるのかを当事者が確認できる書面にします。必要な書面は、原契約、合意内容、次の賃貸借の組み方によって変わります。

現借主の原状回復義務、次の借主の退去時義務、承諾の条件を分け、不動産・法務の専門家へ確認してください。

Q
造作譲渡の買い手を先に探してもよいですか?

A

候補探索と貸主相談の順番は案件によりますが、貸主の意向を無視して売買条件を確定しないでください。少なくとも、貸主承諾と入居審査が必要であることを候補者へ明示します。

Q
貸主が条件付きで承諾した場合、何を期限管理しますか?

A

候補者の審査資料、業態確認、工事内容、保証条件、契約締結日、入居開始日を条件ごとに管理します。口頭の了承を最終承諾として扱わないでください。

条件、提出者、提出期限、未達時の扱いを一覧にし、原状回復へ戻す最終日も同じ日程表へ置きます。

Q
次の借主が決まっていなくても、貸主へ相談できますか?

A

相談はできます。希望する返還方法、残したい造作、想定業態、募集期間、不成立時の原状回復案を示すと、貸主が検討条件を出しやすくなります。

候補者がいない段階では承諾が確定したと受け取らず、どの条件を満たせば再協議できるかを記録してください。

Q
入居審査が長引く間、造作譲渡代金を先払いしてよいですか?

A

無条件の全額先払いは避け、審査、貸主承諾、賃貸借成立と支払いを連動させます。先払いが必要なら、預り金の扱いと不成立時の返還条件を明記してください。

設備の引渡し、鍵の受領、残代金日も同じ工程表へ置き、契約書は不動産・法務の専門家へ確認します。

まとめ:原状回復を避けたいなら、貸主のメリットと不成立案を示す

店舗の原状回復義務は、買い手が見つかっただけで消えるものではありません。

貸主へ、次の入居候補、信用資料、空室期間を短くできる見込み、残す造作、将来の返還条件を示します。

必要に応じて承諾条件を調整しますが、金銭だけでなく、貸主が安心して次の契約を結べる材料を揃えることが先です。

交渉がまとまらない場合に備え、原状回復の見積と工期も止めないでください。

造作譲渡と原状回復の比較を自店で整理したい方には、公式LINEでお渡ししている「居抜き売却で損しないための完全ガイド|造作譲渡料のすべて」が最も役立ちます。

契約条件の整理には「造作譲渡契約書|雛形」、退去全体の期限管理には「閉店チェックリスト|完全版」も使えます。

このほか「黒字経営の教科書|飲食店 赤字10の原因」「造作譲渡・居抜き 基礎用語50選」を含め、全部で5つの特典を無料でお渡ししています。

貸主へ相談する材料と順番を整理したい方は、記事下の公式LINEからご相談ください。