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こんにちは、テナントの窓口のくっつーです。

飲食店を閉店すると決めた後も、家賃、原状回復工事、厨房機器の処分など、お金が出ていく場面は続きます。

店舗に残る内装や設備を次の出店者へ引き継げれば、売却代金を確保しながら、撤去による追加支出を抑えられる可能性があります。

今回、私は横浜で豚骨ラーメン店を経営していた佐々木さんに、開業から閉店、造作譲渡までの実体験を聞きました。

佐々木さんは約2年半営業し、2023年2月に閉店しました。

床・壁・天井・カウンターなどの造作と冷蔵庫などの設備を、次に居酒屋として使う事業者へ合計約150万円で譲渡しました。譲渡後も、約2,000万円の負債が残っています。

この記事では、この実例をもとに、造作譲渡で追加支出を抑えるために確認すべき条件と手順を整理します。

閉店判断と撤退方法を分け、貸主の承諾を得ながら、残った資産を次の利用者へつなげた実例です。

読み進めることで、自店の造作を引き継げる可能性と、不成立に備えて準備すべきことが分かります。

この記事でわかること
  • 負債約2,000万円、造作・設備の譲渡約150万円という実例の内訳
  • 厨房機器だけではない「造作譲渡」の対象
  • 貸主承諾を含む、譲渡が成立した4つの条件
  • 営業継続・造作譲渡による撤退・原状回復を比べる視点
  • 自店で造作譲渡を検討するときの実務手順
この記事がおすすめな人
  • 閉店後に負債や撤去費がどれだけ残るか不安な飲食店経営者
  • 居抜き・造作譲渡を検討したいが、確認順が分からない方
  • 営業継続と撤退を同じ条件で比べたい方

負債2,000万円が残る一方、造作譲渡で追加支出を抑えた

造作譲渡で約2,000万円の負債が消えたわけではありません。得られたのは約150万円の譲渡代金と、譲渡対象を撤去する支出を抑えられたことです。

以下では、佐々木さんが実際に経験したことと、私が実務上の注意点として補う一般論を分けて説明します。

事例の全体像は次のとおりです。

項目佐々木さんの実体験
開業2020年6月、横浜で豚骨ラーメン店を開業
運営形態フランチャイズではなく、自身のブランド
営業期間約2年半
閉店2023年2月
閉店を決めた主な理由資金面の限界と、店舗を任せられる人がいなかったこと
閉店後に残った負債約2,000万円
譲渡前の負債(本人の説明)約2,150万円
譲渡したもの床・壁・天井・カウンター・冷蔵庫などの造作・設備
次の利用者次に居酒屋として使う事業者
造作譲渡代金約150万円
成立を支えた条件貸主の理解・承諾、佐々木さんの交渉経験など

約2,000万円は閉店工事費ではなく、約150万円の譲渡代金を得た後に最終的に残った負債です。約150万円は造作等を譲渡した対価であり、原状回復工事費の見積額ではありません。

負債、譲渡代金、回避できた可能性がある支出の違いは、後半で詳しく整理します。

くっつー:造作を売却できなかったら、2,000万円よりさらに損が増えていたということですか?

佐々木:約150万円で売却したので、約2,150万円だった負債が約2,000万円になりました。加えて、本来なら撤去費用もかかるところでした

2020年6月の開業から、2年半で閉店を決めるまで

くっつー:閉店すると決めたとき、特に何が大変だったんですか?

佐々木:お金がもうもたないことと、店を任せる人がいなかったことです

佐々木さんが横浜に豚骨ラーメン店を開いたのは、2020年6月でした。新型コロナウイルスの影響が大きかった時期の開業です。

フランチャイズへの加盟ではなく、自分のブランドとして店を立ち上げ、約2年半にわたり営業を続けました。

しかし、2023年2月に閉店を決断します。理由は1つではありませんでした。

資金面が厳しくなったことに加え、店舗を任せられる人がいなかったことも大きな要因でした。

飲食店の撤退判断では、売上や利益だけを見ればよいわけではありません。経営者が現場を離れられるのか、店長候補を確保できるのか、立て直す時間があるのかによって、同じ月次損益でも選択は変わります。

佐々木さんの事例は、資金の問題と人の問題が重なったとき、営業継続が難しくなることを示しています。

私は、閉店時には「営業を続けるか」と「どの方法で退去するか」を分けて判断すべきだと考えています。

  1. このまま営業を続けるか、閉店するか
  2. 閉店するなら、どの方法で物件を返すか

閉店するかどうかは、事業の収支、人員、資金繰り、経営者自身の生活まで含めた判断です。一方、造作を次の出店者へ引き継ぐか、原状回復して貸主へ返すかは、撤退方法の設計です。

閉店の決断が遅れれば、毎月の赤字や家賃が続きます。しかし、撤退方法を急いで1つに決めると、本来売れる造作まで処分してしまうことがあります。

造作譲渡と営業継続は別に判断する

営業継続の判断と造作譲渡の可否は、別々に検討してください。「買い手が見つかるまで営業を続ければよい」とは限りません。

資金が尽きる時期と明け渡し期限を先に把握し、売却が成立しない場合の退去案も同時に用意します。

150万円で譲渡したのは、厨房機器だけではない

佐々木さんが約150万円で譲渡したのは厨房機器だけではなく、床、壁、天井、カウンターを含む店舗の造作です。次の利用者へ、これらをまとめて引き継ぎました。

本記事では、店舗取引の実務でまとめて扱われる内装造作・厨房設備・什器などの譲渡を「造作譲渡」と表記します。

一般にまとめて「店舗を売却する」と呼ばれることがありますが、この事例で売ったのは土地や建物ではありません。ラーメン店のブランドや事業そのものを譲ったわけでもありません。

「店舗売却」と混同されやすい4つの意味を分けると、次の通りです。

項目意味
造作譲渡内装・設備・什器などの売買
賃貸借の手続き現借主の退去と、次の利用者の入居契約・審査
事業譲渡ブランド、営業上の権利、顧客関係などを含む事業の承継
不動産売買土地や建物の所有権の売買

造作を売買する契約ができても、買主が自動的にその物件へ入居できるわけではありません。貸主の承諾と必要な入居審査を受け、賃貸借の手続きを進める必要があります。

この2つを混同すると、「造作代金は合意したのに物件を使えない」という問題が起こり得ます。なお、佐々木さんの事例が新規契約だったのか、契約上の地位を承継したのかまでは、今回の対談では確認できません。

私がこの事例で注目したのは、ラーメン店から居酒屋へ引き継いだことです。同じ業態でなくても、厨房、給排水、排気、客席、カウンターなどが次の事業計画に合えば、造作を活用できる可能性があります。

くっつー:造作物というのは、具体的に何を指すんですか?

佐々木:床・壁・天井・カウンターです。冷蔵庫も含めて、次の方へ丸ごと売却しました

ただし、異業態なら何でも成立するわけではありません。重飲食が認められているか、排気や給排水の容量が足りるか、店内レイアウトを転用できるか、貸主が次の業態を認めるかによって判断は変わります。

造作譲渡が成立した4つの条件

佐々木さんの店舗では、次の4条件が重なって造作譲渡が成立しました。「自店も150万円で売れる」と考える前に、同じ条件があるかを確かめることが先です。

1.もともと居抜きで取得した店舗だった

佐々木さんは、この店舗を前の利用者から居抜きで取得していました。その造作を約2年半使い、次の利用者へ引き継いでいます。

ゼロから高額な内装を新設し、その投資額に近い金額で売れた事例ではありません。

譲渡価格は、開業時にいくら払ったかだけでは決まりません。設備の使用年数や状態、修理履歴、次の出店者が使える範囲、工事を省ける価値、募集期限などが影響します。

売主にとって高価だった設備でも、買主が使わなければ撤去対象です。反対に、古くても開業工事を短縮できる設備なら、買主に価値が生まれることがあります。

2.貸主が居抜きでの引き継ぎを理解し、認めていた

造作譲渡で最も重要な条件は、貸主側の理解と承諾です。賃貸借契約にスケルトン返しの特約があれば、現借主だけの判断で造作を残すことはできません。

居抜きで入居した物件であっても、居抜きのまま返せるとは限らないため、現在の契約内容を確認する必要があります。

佐々木さんは居抜きで入居し、貸主も次の利用者へ造作を残すことを認めました。これは結果を左右した大きな条件です。

貸主にとっては、空室期間、次の賃料、入居者の信用、用途、建物への影響も重要です。借主側の売却希望だけでなく、明け渡し期限、次の業態、残す設備、不成立時の返還方法まで整理して相談します。

貸主側の判断基準を知るには、退去の連絡時期が貸主側の再募集に与える影響も参考になります。

3.次の利用者の業態と造作が合っていた

買主は、売主が内装にかけた金額ではなく、自分の店に使えるかを見ます。今回の次の利用者は居酒屋で、ラーメン店の厨房やカウンターなどを活用できました。

ガス容量が足りない、ダクトの位置が合わない、設備が故障しているといった場合、追加工事が増えます。買主の改修費が大きければ、造作の評価は下がります。

売却前には、設備の寸法、年式、動作状況、修理歴、リースの有無を揃えることが重要です。

4.佐々木さんに造作譲渡の交渉経験があった

佐々木さんは、自店を閉める前から造作譲渡に関わる実務経験がありました。交渉の道筋を知っていたからこそ、造作譲渡を選び、手続きを進められました。

くっつー:そもそも、なぜ造作譲渡という選択を実行できたんですか?

佐々木:もともと居抜きで受け入れられ、オーナーさんに理解がありました。私自身にも造作譲渡の仕事と交渉の経験がありました

造作譲渡では、買主を見つけるだけでは足りません。相談の順番、売買対象、不具合の開示、賃貸借が成立しなかった場合の扱いも調整します。

経験がない場合は、貸主・現借主・次の利用者の利害を整理できる専門家へ早めに相談するのが現実的です。

負債2,000万円、譲渡150万円、回避できた工事費は別々に考える

佐々木さんの実体験を数字だけで説明するとき、最も注意したいのが3つの金額の混同です。

区分この事例で確認できること誤解しやすい点
閉店後に残った負債約2,000万円閉店工事だけの費用ではない
造作譲渡代金約150万円負債全体を解消した金額ではない
回避できた可能性がある支出造作の撤去・処分等に伴う追加支出正確な工事見積額は確認できていない

本人の説明を時系列で置くと、造作譲渡前の負債が約2,150万円、譲渡代金が約150万円、最終的に残った負債が約2,000万円です。

買い手が負債を引き受けたのではありません。売り手である佐々木さんが譲渡代金を得て、残る負債を圧縮しました。

そのうえで正確に言えるのは、造作・設備を約150万円で売却できたことと、譲渡対象を撤去する追加支出を抑えられたことです。「合計何百万円得をした」とまでは断定できません。

工事費は、原状回復の範囲、面積、設備、搬出条件などで変わります。この事例では、確定した工事見積額まで確認できていません。

原状回復と解体工事も同じ意味ではありません。原状回復とは、契約や貸主との合意に沿って、定められた状態まで物件を戻すことです。

解体・撤去工事は、その状態を実現する手段の1つです。すべてを撤去する場合もあれば、貸主と合意して一部を残す場合もあります。

閉店時の金額は項目を分けて管理する

閉店時の資金表は、「既存の負債」「売れる資産」「退去までの固定費」「撤去・原状回復費」「解約に伴う精算」を分けて作ります。造作譲渡代金だけでなく、成立までに家賃が何か月発生するかも比較してください。

営業継続・造作譲渡・原状回復を同じ条件で比べる

閉店を検討するときは、「造作を引き継げそう」という期待だけで決めず、少なくとも3つの案を同じ条件で比較します。

判断項目営業を続ける造作譲渡で撤退する原状回復して撤退する
毎月の資金流出赤字・家賃・人件費が続く可能性買主探索中は家賃等が続く可能性工事・明け渡しまで家賃等が続く
人員店舗運営を担う人が必要引継ぎ対応を行う人が必要退職・精算・搬出対応が必要
貸主との調整通常営業の範囲次の業態・入居審査・残置物の承諾が重要工事範囲・施工方法・返還状態を確認
造作の扱い使用を続ける売却または無償譲渡の可能性撤去費・処分費になる可能性
時間の制約手元資金による買主募集と審査の時間が必要見積・発注・工期の確保が必要
不成立時の対応赤字が続く可能性原状回復案へ切り替える計画どおり明け渡す

造作譲渡には、売却代金を得て撤去費を抑えられる可能性がある一方、時間がかかります。買主候補が見つかっても、貸主審査や契約条件で成立しないことがあります。

買い手探しだけに時間を使い、工事を発注できる期限を過ぎれば、明け渡しが遅れるおそれがあります。

A案として造作譲渡を進める場合でも、B案として原状回復の見積と工期を把握しておくことを勧めます。

募集を打ち切る期限を決め、その日までに賃貸借手続きの見込みが立たなければ、B案へ切り替えます。

自店で造作譲渡を検討するときの6ステップ

ここからは、佐々木さんの実例を自店へ置き換えるための確認順序です。

事業用賃貸借は契約ごとの差が大きいため、実際の契約書を確認したうえで、貸主・管理会社や必要な専門家へ確認してください。

1.賃貸借契約と解約期限を確認する

最初に、解約予告期間、原状回復、スケルトン返し、賃借権譲渡・転貸、用途などを確認します。貸主への造作買取請求権と、次の利用者に対する造作譲渡は別の仕組みです。

契約に沿って解約通知を出すと、予告期間に基づく明け渡し予定日が具体化します。資金がもつ期間、買主募集、工事に必要な期間を工程表にします。

2.譲渡できるものの所有者と状態を確認する

店内にあるものが、すべて現借主の所有物とは限りません。

内装、厨房機器、リース品、貸与品、建物側設備を一覧にし、所有者、年式、動作状況、故障、撤去義務を記録します。貸主や他社の所有物は勝手に売却できません。

3.貸主・管理会社へ相談する

買主探しを本格化する前に、貸主または管理会社へ相談します。

民法612条では、賃借権の譲渡や転貸について原則として賃貸人の承諾が必要です。e-Gov法令検索の民法も確認してください。

造作売買とは別に、新規契約か契約上の地位の承継か、審査や保証の条件も確認します。

4.次の利用者が本当に使えるかを確認する

買主候補の予定業態が契約用途や建物ルールに合うか、排気、消防、給排水、電気・ガス容量などを確認します。

造作を引き継いでも営業許可まで自動で承継されるとは限りません。保健所、消防、酒類提供などの手続きは、次の利用者が自分の業態に合わせて確認します。

5.造作譲渡契約と賃貸借の成立条件をそろえる

造作譲渡契約と賃貸借の成立条件は分けて確認し、物件を借りられないのに売買だけが残らないようにします。

造作譲渡契約では、対象物、代金、引渡し日、不具合、賃貸借が成立しなかった場合の扱いを明確にします。契約設計は宅地建物取引業者や弁護士などへ確認してください。

設備の売却に関する税務は、国税庁の説明を参考に税理士へ確認します。

6.不成立時の原状回復期限を決める

造作譲渡を目指す場合でも、原状回復の見積、工事会社の空き状況、必要工期を確認します。貸主承諾と契約の見込みが立たなければ工事へ切り替える期限を決め、明け渡しの遅れを防ぎます。

実務で押さえるべき要点

佐々木さんの実例で確認できたのは、貸主の理解と承諾を得て、造作等を次の利用者へ約150万円で譲渡できたことです。

私がこの事例から持ち帰ってほしいのは、「高く売ること」だけではありません。

自店で検討するときは、資金が尽きる時期と明け渡し期限を見ながら、貸主への相談、買主審査、造作売買、不成立時の原状回復案を1つの工程として管理してください。

よくある質問

Q
スケルトン返しの契約でも造作譲渡はできますか?

A

契約上スケルトン返しが定められていても、貸主と個別に合意し、次の利用者の入居が承認されれば、造作を残して引き継げる場合があります。ただし、現借主だけで決めることはできません。

貸主との合意書や関連契約では、現借主の原状回復義務をどこまで免除するのか、新しい借主が将来退去するときにどの状態まで戻すのかを、それぞれ明確にします。

Q
ラーメン店から居酒屋のように、異なる業態へも譲渡できますか?

A

異業態でも、造作や設備が次の事業計画に合い、貸主が業態を承認すれば成立する可能性があります。佐々木さんの店舗は、ラーメン店から居酒屋へ引き継がれました。

排気、臭気、給排水、消防、営業時間などの条件が合わなければ、出店できないこともあります。居抜き物件のメリット・デメリットも確認し、買主側の改修費まで含めて判断してください。

Q
造作譲渡代金に税金はかかりますか?

A

事業者が事業用の設備などを有償で譲渡する場合、消費税上の資産の譲渡に該当することがあります。また、帳簿価額や売却額によって会計・税務処理も変わります。

契約書で何の対価かを明確にし、自社の課税状況を含めて税理士へ確認してください。

まとめ:負債が残る閉店でも、撤退時の追加支出を減らす出口は検討できる

佐々木さんは、横浜の豚骨ラーメン店を約2年半で閉店し、約2,000万円の負債が残りました。

それでも、床・壁・天井・カウンターなどの造作と冷蔵庫などの設備を、合計約150万円で次に居酒屋として使う事業者へ譲渡しました。

その結果、売却代金を確保し、撤去に伴う追加支出も抑えられました。

この結果を支えたのは、もともと居抜きで取得した店舗だったこと、貸主が引き継ぎを認めたこと、次の利用者が造作を活用できたことです。

さらに、佐々木さん自身に交渉経験がありました。どれか1つが欠ければ、同じ結果になったとは限りません。

負債が大きくても、最後に残った選択肢まで捨てず、同時に造作譲渡が不成立だった場合の切替期限も決めてください。

造作譲渡へ期待しすぎて、原状回復へ切り替える期限を逃してもいけません。

契約、手元資金、貸主の意向、造作の所有、買主の審査、原状回復の予備案を並べると、自店で取れる出口が見えてきます。

閉店を決めた方だけでなく、続けるか迷っている段階でも構いません。

賃貸借契約書、設備一覧、希望する退去時期、現在の収支が分かる資料を用意すると、状況を整理しやすくなります。

私たちテナントの窓口では、店舗売却や造作譲渡を含め、閉店時に何をどの順序で確認すべきか一緒に整理します。

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