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健康志向の高まりや小規模で開業しやすいことから、フィットネスクラブやパーソナルジムは店舗物件の入居候補になります。住宅より高い賃料を見込めるケースもあり、貸主にとって魅力的に見えるでしょう。
一方、帝国データバンクによると、2026年1〜7月のフィットネスクラブ事業者の倒産は23件で、前年同期の19件を上回りました。そのうちパーソナルジム業態が6件を占めています。
この統計は「ジムには貸さないほうがよい」という意味ではありません。大切なのは、業種名だけで判断せず、目の前の申込者が継続して賃料を支払える根拠を確認することです。
- フィットネスクラブの倒産動向と統計の見方
- パーソナルジムの収益が不安定になりやすい条件
- 貸主が入居審査で確認したい5項目
- 契約前と入居後に備える考え方
- フィットネス系テナントから申し込みを受けている貸主
- 住宅や事務所からジム用途への変更を検討している方
- 高い賃料と長期入居のどちらを重視するか悩んでいる方
倒産増を理由に一律排除せず、個別の事業継続性を審査する
結論からいうと、フィットネス業界の倒産が増えていることと、個別の入居申込者の信用力は分けて考える必要があります。
帝国データバンクの「『フィットネスクラブ』の倒産動向(2026年1-7月)」では、同期間の倒産が23件、前年同期から4件増と報告されています。年間件数が過去最多となった前年の同期間を上回り、TDBは2026年の年間件数が初めて40件に達する可能性を示しています。ただし、40件は予測です。
また、ここでいう倒産は「負債1,000万円以上・法的整理」です。閉店、休廃業、赤字事業者のすべてを示す数字ではありません。
倒産企業を業歴別にみると、設立10年未満が全体の6割超でした。ただし、設立年数だけで個社を評価するのではなく、資金の余力や運営経験などと組み合わせて確認します。
そのため、統計は「審査を深めるサイン」として使い、申込者の事業計画や資金計画、運営実績を個別に確認します。
フィットネスクラブの倒産が増える背景
帝国データバンクは、業界が苦しくなっている要因として、複数の収益構造上の課題を挙げています。
商圏内のオーバーストアと価格競争
駅近の安価な24時間ジム、無人型のコンビニジム、パーソナルジムなど、多様な業態の出店が続いています。限られた商圏内で店舗が増えれば、会員の獲得競争は激しくなります。
値引きで入会した会員が定着しない
「入会金無料」や特別割引が常態化すると、開業初期の売上を確保しにくくなります。キャンペーン価格から正規価格へ移る際に会員が離脱すれば、月額収入は安定しません。
会員収入以上に運営コストが増える
専門インストラクターの人件費、集客コスト、エネルギー価格上昇による光熱費などが経営を圧迫します。需要が増えていても、会員から得る収入より費用の伸びが大きければ、継続的な経営は難しくなります。
パーソナルジムで継続収益が難しくなる条件
23件の倒産のうち、パーソナルジム業態は6件でした。ただし、これはパーソナルジム全体の倒産率を示すものではありません。
パーソナルジムは、マンションの一室と最低限の設備でも開業しやすく、新規参入が増えやすい業態です。一方で、「2〜3カ月の短期集中ダイエット」などのモデルは、顧客の利用期間が短く、継続収入を確保しにくい面があります。
貸主が見るべきなのは「パーソナルジムかどうか」だけではなく、値引きなしで会員が継続する仕組みや、月額固定収入、損益分岐点、資金の余力です。
貸主は「高い賃料」と「長く入居する可能性」を並べて見る
住宅として貸すより高い賃料を見込み、マンションの一室などをパーソナルジム用途で貸す場合は、契約賃料だけでなく早期撤退時の負担も比較する必要があります。
事業用テナントは、その場所で営業し、利益から賃料を支払います。高い賃料で契約できても、短期間で退去されれば、貸主には空室期間、再募集、原状回復の負担が発生します。
そのため、提示賃料だけを比べるのではなく、「期待賃料×入居が続く可能性」と「撤退後の空室・再募集・復旧コスト」を並べて考える必要があります。
入居審査で確認したい5つの項目
以下は、動画の問題意識をもとにした一般的な確認例です。必要な資料と判断基準は、申込者の属性、物件、管理方針によって調整してください。
1. 出店理由と商圏・競合の見立て
「駅に近い」という理由だけではなく、想定顧客、競合店舗、商圏人口、集客方法を確認します。近隣に低価格の24時間ジムがあるなら、どのように差別化するのかを見ます。
2. 売上計画と会員数の前提
売上が「会費×会員数」のみで示されている場合は、開業から目標会員数に達するまでの期間、退会率、値引き期間終了後の継続率も確認します。数字の根拠を説明できるかが重要です。
3. 毎月の支出と損益分岐点
賃料や固定人件費などの固定的支出に加え、光熱費・広告費などの変動費、借入返済を含む毎月の資金流出を確認します。そのうえで、何人の月額会員がいれば赤字を避けられるのかを見ます。安全な賃料負担率は業態や単価によって異なるため、一律の比率では判断しません。
4. 自己資金・借入・運転資金の余力
開業時の内装や機器に資金を使い切ると、会員が計画通り集まらない期間の賃料支払い余力が小さくなります。初期投資後にどの程度の運転資金が残るのか、計画が下振れした場合に何カ月耐えられるのかを見ます。
5. 運営者の経歴・既存店実績・客観資料
事業計画とあわせて、運営者の経験、既存店の収益と継続期間、法人の登記事項、決算・納税資料、保証内容など、適法に取得できる客観資料を確認します。設立年数が短いだけで排除するのではなく、複数の資料を組み合わせて判断しましょう。
審査の基本は「優良テナントの見極め方」でも整理しています。
契約前に整理したいリスク対策
審査で事業継続性を確認した後は、物件と業態に応じた契約条件を整理します。
- 保証金・敷金が、未払い賃料だけでなく造作撤去や原状回復の負担と見合うか
- 連帯保証や保証会社が保証する範囲と免責条件
- 器具、マシン、看板、内装などの原状回復・残置物の扱い
- 騒音・振動、営業時間、建物の用途、消防、設備容量の確認
- 賃料支払いが遅れた場合の連絡、協議、契約上の手順
これらは一般的な確認例です。契約条項の法的有効性や物件に必要な手続は、宅建業者、弁護士、管理会社、消防・行政等に確認してください。
店舗契約の基本的な注意点は「店舗の賃貸借契約で押さえたい3つのポイント」も参考にしてください。
入居後に見逃したくない変化
入居審査で問題がなくても、事業環境は変わります。日常の管理で、次のような変化が重なっていないか確認します。
- 賃料の遅れや支払日の相談が増える
- 営業時間が大幅に短縮される
- スタッフの入れ替わりや設備管理の低下が続く
- 連絡が取りにくくなり、報告や約束が滞る
一つの変化だけで経営悪化や倒産を断定できません。監視を強めるのではなく、通常の管理で把握した事実を記録し、早めに状況を確認するためのサインとして扱います。
よくある質問
Qフィットネスクラブやパーソナルジムの入居は断るべきですか?
業種だけを理由に一律に断る必要はありません。統計は注意材料の一つとし、個別の資金計画、出店根拠、運営実績、契約条件を総合して判断します。
Qパーソナルジムの審査では何を提出してもらえばよいですか?
事業計画書、収支・資金計画、決算資料、法人・代表者情報、既存店の実績などが確認例です。必要な範囲は、申込者の属性や管理方針によって調整します。
Q賃料負担率は何%なら安全ですか?
業態、会費単価、会員の継続率、立地、人件費、借入返済などで異なるため、一律の安全基準は設けられません。売上前提と固定費を照合し、損益分岐点と下振れした場合の耐性を見ます。
Q保証金を高くすれば倒産リスクに備えられますか?
保証金は一定の備えになりますが、それだけで十分とは限りません。保証会社・連帯保証の範囲、原状回復、造作撤去、残置物、賃料遅延時の対応を組み合わせて検討します。
Q入居後はどのような変化に注意すべきですか?
賃料の遅れ、営業時間の短縮、人員や設備管理の変化、連絡の滞りなどが確認例です。ただし、一つの変化で倒産と決めつけず、事実を記録した上で早めに対話します。
Qテナントの賃料支払いが遅れたら、最初に何をすべきですか?
契約内容と入金履歴を確認し、早い段階で連絡して遅延理由と支払予定を記録します。督促や解除などの対応は独断で進めず、管理会社や弁護士等に相談してください。
業種ではなく、事業の根拠と継続性を見極める
2026年1〜7月のフィットネスクラブ事業者の倒産は23件で、前年同期の19件を上回りました。価格競争、会員定着の難しさ、人件費や光熱費の上昇が重なると、需要があっても事業の継続が難しくなります。
貸主に必要なのは、「パーソナルジムだから危険」と判断することではありません。入居審査で数字の根拠を確認し、契約条件で撤退時の負担を整理し、入居後は通常の管理を通じて変化を早く把握することです。
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