\ 動画で見たい方はこちら /

所有物件を増やしてきたものの、「借入が適正か」「同じ地域に物件が偏っていないか」「いつ売却を考えるべきか」と迷うオーナーは少なくありません。不動産ポートフォリオは、戸数や総額の大きさだけで良し悪しを判断できないからです。

今回の対談では、物件を増やすこと自体ではなく、「借入をどう見るか」「遠方の物件をどう管理するか」「どの変化が起きたら売却を考えるか」を深掘りしました。複数物件を持つ貸主が、自分のポートフォリオを見直すためです。

ゲストは、大家歴14年、会社員大家を経て独立して10年になる不動産事業家・たまっちさんです。収録時点で所有規模は約2億5000万円、年間家賃収入は約3600万円。地方に多くの物件を持ちながら遠隔管理してきた実例から、貸主が押さえたい収益性・借入・地域分散・管理体制・売却の判断軸を整理します。

ゲスト紹介

たまっちさんは、2012年に不動産投資を始め、会社員大家を経て独立した不動産事業家です。音声番組「たまっちのちょいリッチラジオ」のパーソナリティを務め、『最短5年で家賃年収1000万円になる方法』も出版しています。

この記事でわかること
  • 不動産ポートフォリオを組むときの5つの判断軸
  • 地方へ物件を集中させるメリットとリスク
  • 遠隔管理を成立させる管理会社との役割分担
  • 空室期間や賃料から売却サインを読む方法
  • 借入残高だけで経営状態を判断できない理由
この記事がおすすめな人
  • 複数のテナントビル・店舗物件を所有している貸主
  • 今後の物件取得や地域分散を検討しているオーナー
  • 遠方の物件を管理会社へ任せたい方
  • 保有継続と売却の判断基準を持ちたい方

不動産ポートフォリオは「規模」より5つの判断軸で組み立てる

不動産ポートフォリオを考えるとき、最初に見るべきなのは「何億円持っているか」ではありません。収益性、借入残高と純資産、地域分散、管理体制、出口戦略の5つを一緒に確認することが基本です。

  1. 家賃収入から経費や返済を差し引いて利益が残るか
  2. 借入に対して、物件価値や現預金を含む純資産が増えているか
  3. 特定の地域や物件種別へリスクが偏っていないか
  4. 空室・修繕・募集へ対応できる管理体制があるか
  5. 保有し続ける条件と売却する条件が決まっているか

収益性

年間家賃収入が大きくても、返済、管理費、修繕費、税金が増えれば手元に残る金額は変わります。満室想定の表面利回りだけでなく、実際の入居率や修繕履歴まで含めて確認する必要があります。

物件ごとに直近12か月の実収入を出し、返済と運営費を差し引いた後にいくら残ったかを確認します。募集賃料ではなく、空室期間を含む実績で比べることがポイントです。

借入残高と純資産

借入残高は重要ですが、その数字だけで安全性は決まりません。返済が進み、物件価値と現預金を合わせた資産が増えていれば、同じ借入額でも経営状態は変わります。

借入を見るときは、残高に加えて金利、年間返済額、残存期間、物件の査定額を並べます。借入が減っていても、物件価値や家賃収入がそれ以上に下がっていれば安心とはいえません。

地域分散

同じ地域に物件を集めれば、現地訪問や管理会社との連携は効率化できます。一方で、人口減少、災害、地域経済の変化をまとめて受ける点には注意が必要です。

地域別に家賃収入と借入残高を集計すると、どこで問題が起きたときに影響が大きいかが見えます。戸数だけでなく、収入と返済の偏りまで確認しましょう。

管理体制

遠隔地の物件は「現地へ何回行くか」より、空室、修繕、家賃、問い合わせ状況が定期的に届く仕組みのほうが重要です。

管理会社へ任せる範囲と、貸主の承認が必要な金額・工事を決めます。月次報告で問い合わせ数や内見数まで確認できれば、賃料の問題か、募集方法の問題かを早く切り分けられます。

出口戦略

不動産は古くなり、競合も市場も変化します。購入時点で「どの状態なら保有を続け、どの変化が起きたら売却準備へ入るか」を決めておくと、判断が遅れにくくなります。

空室期間、募集賃料、修繕費について警戒ラインを設定します。1回の空室だけで決めず、以前より決まりにくい状態が続いているかを記録から判断します。

ポートフォリオは5つの判断軸で確認する

物件数を増やすこと自体を目標にせず、5つの判断軸のどこに弱点があるかを定期的に確認しましょう。

家賃収入約3600万円のポートフォリオを数字で確認

たまっちさんのポートフォリオは、収録時点の概算で次のような構成です。

項目収録時点の概算
所有物件の規模約2億5000万円
借入残高約2億円
年間家賃収入約3600万円
売却前の年間家賃収入約4200万円
所有戸数80数室

表だけを見ると借入約2億円の大きさが目に入ります。しかし、たまっちさんは2012年、32歳のときに2件目の一棟マンションを購入するため、すでに約2億円を借りていました。その後は返済や売却を進め、借入と資産の差である純資産を積み上げています。

同じ「借入2億円」でも、購入直後と14年後では、返済の進み方、物件価値、現預金、家賃収入が異なります。 貸主は借入残高を単独で見るのではなく、次の数字を並べて確認することが大切です。

  • 直近12か月の実収入と手残り
  • 現在の借入残高と年間返済額
  • 物件ごとの査定額
  • 今後3〜5年の修繕予定
  • 空室期間と募集賃料の推移

くっつー:2012年の時点で2億円を借りていたんですか?

たまっちさん:32歳のとき、通算2件目の物件を買うために約2億円を借りました。

くっつー:今も同じ規模の借入でも、その間に返済や売却が進み、純資産が増えているということですね?

たまっちさん:同じ借入額でも、収入や資産部分が徐々に増えているのがポイントです。

地方への集中は収益性とリスクをセットで見る

たまっちさんが所有する80数室のうち、山口県には48室、12室、14室の計74室があります。出身地や居住地ではなく、全国の物件を調べた結果、当時の収益性、融資の可能性、資産評価を見て山口県を選びました。

山口県を選んだ理由

地縁のない地域でも、数字と現地調査を重ねれば候補になり得ます。たまっちさんは東京に住みながら全国を調べ、日帰りで現地確認できる範囲も広げて検討しました。

ここで重要なのは「山口県ならよい」という結論ではありません。取得時点の利回りだけでなく、融資条件、賃貸需要、資産評価、管理会社の対応力をまとめて比較したことです。

くっつー:出身地でもない山口県を選んだのは、なぜですか?

たまっちさん:大型物件を買いたいと考えたとき、収益性や融資、資産評価を基準に全国を見ました。その結果、当時の山口県が経営しやすそうだと判断しました。

地域集中で見えてきたリスク

物件が同じ地域に集まると、一度の訪問で複数棟を確認でき、管理会社との連携もまとめやすくなります。一方で、人口減少や災害、地域経済の悪化が起きたとき、複数物件が同時に影響を受けます。

たまっちさんも、人口が減っている地域では空室が増えつつある現実を認めています。今後は東京・大阪の通勤圏にあり、比較的物件価格を抑えられる地域も検討する考えです。

地域集中を見直す合図

同じ地域の複数物件で空室期間が伸びているなら、個別物件の問題だけでなく、人口、競合供給、主要企業の移転など地域全体の変化を確認しましょう。

遠隔管理は訪問回数ではなく報告と役割分担で設計する

山口県への訪問は年1〜2回程度。戸建ての中には3〜4年訪問していない物件もあります。それでも運営できるのは、空室時の修繕から募集までを現地の不動産会社や管理会社へ任せているためです。

ただし、管理会社へ委託することは「何も確認しなくてよい」という意味ではありません。貸主側には、少なくとも次の確認項目が必要です。

  • 空室発生から募集開始までの日数
  • 問い合わせ数、内見数、申込数
  • 周辺の競合賃料と募集条件
  • 修繕提案の内容、費用、優先順位
  • 滞納やクレームの発生状況
  • 月次・四半期ごとの報告方法

遠隔管理を成立させるのは訪問回数の少なさではなく、異変が数字で届き、誰が対応するか決まっている状態です。

管理会社へ任せているのに空室が長引く場合は、委託先の得意分野や募集網が物件と合っているかも見直しましょう。店舗物件では、居住用賃貸とは異なる業種ネットワークや出店企業との接点が必要です。空室対策の委託先を見直したい方は、店舗物件に強い不動産会社を選ぶ3つのポイントも確認してみてください。

最初の1件と大きな借入を同じ基準で比べない

たまっちさんの1件目は、千葉県のオーナーチェンジ戸建てでした。購入価格は300万円、年間家賃収入は60万円で、当時の表面利回りは20%。借入をせずに購入し、14年後の収録時点でも保有しています。

その次に、京都の一棟マンションを約2億円の借入で取得しました。最初から大規模な借入をしたのではなく、小さな物件で家賃が入る経験を得た後、次の投資へ進んだ流れです。

この実例から持ち帰りたいのは、300万円や表面利回り20%という数字そのものではありません。市況や融資環境は変わるため、現在も同じ条件で取得できるとは限らないからです。

貸主が次の物件を検討するときは、既存物件の運営で得た経験を使い、次の規模でも管理・返済できるかを判断します。初めて大家になるまでの資金準備や物件探しの順番を整理したい場合は、貯金300万円から大家になった実例も参考になります。

売却サインは空室期間と賃料の変化に表れる

たまっちさんが売却で意識しているのは、「一番よい状態で次の所有者へ引き継ぐ」ことです。購入後に修繕や募集改善を行い、満室や賃料上昇を実現しても、建物は古くなり、修繕費や競合状況は変化します。

以前は1〜2か月で決まっていた空室が3〜4か月へ延びる、賃料を下げなければ決まらない、といった変化は売却検討のサインです。

くっつー:物件のピークは、どこで判断するんですか?

たまっちさん:空室が1〜2か月で決まっていたのに3〜4か月かかるようになれば、市場や物件の力が変わった可能性があります。

くっつー:エリアと物件、両方の変化を見るんですね?

たまっちさん:家賃や空室には、市場、競合、物件の力が反映されます。危険だと感じたら早めに売却準備へ入ります。

売却を急ぐ前に、まず原因を分解します。

  1. 物件固有の問題か
  2. 募集条件や管理会社の問題か
  3. 競合物件の増加か
  4. エリア需要の低下か
  5. 修繕費が今後大きく増えるか

改善可能なら、修繕や募集条件の見直しで満室へ戻してから売却する選択肢があります。反対に、地域需要そのものが落ちているなら、改善費用を投じ続ける前に出口を検討する必要があります。

売却準備は早めに始める

空室と賃料の悪化が深くなるほど、収益還元で見た売却価格にも影響します。月次の募集データを残し、変化を早く捉えましょう。

不動産ポートフォリオに関するよくある質問

Q
不動産ポートフォリオとは何ですか?

A

所有する物件、借入、収入、地域、物件種別、管理体制、売却方針を一つの資産構成として捉えたものです。物件一覧だけでなく、リスクと出口まで含めて管理します。

Q
借入額が大きいほど危険ですか?

A

借入額だけでは判断できません。年間返済額に対する実収入、金利、残存期間、物件価値、現預金、修繕予定を合わせて確認してください。借入が同額でも、返済と資産形成が進んでいるかで状態は変わります。

Q
地方物件は遠隔でも管理できますか?

A

管理会社との役割分担と報告体制を作れば可能です。ただし、空室、修繕、賃料、問い合わせ状況を貸主が確認できることが前提です。テナント物件では事業用仲介の経験や業種ネットワークも重要です。店舗物件に強い不動産会社を選ぶ3つのポイントでは、委託先を見極める視点を整理しています。

Q
同じ地域に物件を集めるメリットとデメリットは?

A

現地訪問や管理会社との連携を効率化できるのがメリットです。デメリットは、人口減少、災害、地域経済の変化が複数物件へ同時に及ぶことです。取得前に地域別の売上・借入・空室割合を把握してください。

Q
売却を検討するサインは何ですか?

A

空室期間の長期化、募集賃料の低下、問い合わせ数の減少、修繕費の増加が代表的です。一時的な募集方法の問題か、物件・地域の競争力低下かを分けて判断します。

Q
これから大家を目指す場合、最初に何を整理すべきですか?

A

自己資金、借入可能額、目標とする手残り、対応できる管理範囲を整理します。物件探しと金融機関探しを並行し、購入後の空室・修繕まで試算しておくことが大切です。最初の行動順を確認したい方は、貯金300万円から大家になった実例も参考になります。

戸数を増やす前に「持ち続けられる仕組み」を整えよう

不動産ポートフォリオは、物件の規模を競うためのものではありません。収益性、借入と純資産、地域分散、管理体制、出口戦略の5つを見える化し、経営判断を早めるための道具です。

たまっちさんの実例では、地方で高い収益性を得る一方、人口減少や地域集中のリスクも把握し、空室期間と賃料の変化を売却判断へつなげています。買う基準だけでなく、任せる基準と手放す基準まで決めておくことが、長く賃貸経営を続ける土台になります。

まずは所有物件ごとに、直近12か月の入居率、空室期間、賃料、修繕費、借入残高を一枚にまとめてみてください。テナント大家として他のオーナーの事例も学びたい方には、LINE登録者限定の無料特典をご用意しています。120名以上が参加する「テナント大家の会」へのご招待に加え、空きテナント対策や契約実務に役立つ資料も受け取れますので、日々の経営判断にお役立てください。