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築古の店舗区画を貸し出すとき、空室を埋めることだけを優先していませんか。
テナントは、そこで売上をつくり、従業員を雇い、顧客との関係を築きます。そのため、貸主が将来建て替えたいと思っても、住宅のように移転先を用意すれば簡単に解決するとは限りません。
実際に、上階の住宅を空けた後も1階のコンビニが退去せず、建て替えを断念したオーナーの事例があります。
この記事では、築古テナントビルで店舗の退去交渉が難しくなる理由と、建て替え時期から逆算して契約を決める方法を解説します。一般的な契約比較ではなく、建物の出口を守るための実務に焦点を当てます。
- 築古テナントで普通借家を慎重に選ぶべき理由
- 店舗の退去交渉が難しくなりやすい背景
- 普通借家と定期借家を判断する確認事項
- 募集前に管理会社へ確認したい内容
- 築古のテナントビルを所有している方
- 数年後に建て替えや売却を検討している方
- 店舗区画の新規募集を始める方
- 管理会社から普通借家契約を提案されている方
築古テナントビルは募集前に建て替え時期を決める
結論からいうと、築年数が古く、将来の建て替えや大規模修繕を想定しているテナント物件では、普通借家契約を漫然と選ぶべきではありません。
普通借家契約では、貸主から契約を終了させる際に正当事由が問題になります。建て替えの必要性があっても、それだけで希望どおりの時期に退去してもらえるとは限りません。
一方、定期建物賃貸借契約は、適切な手続きを行えば、合意した期間の満了によって契約を終了させる設計ができます。両契約の基本的な違いは、定期借家契約と普通借家契約の比較記事で詳しく解説しています。
建て替え予定と契約期間を先に合わせる
契約方式を決める前に、建物をあと何年使う予定なのかを整理しておく必要があります。
- 建て替えを考えている時期
- 大規模修繕が必要になる時期
- 売却や自己利用の可能性
- テナントが投資を回収するために必要な期間
貸主の出口計画とテナントの営業計画が合わないまま契約すると、数年後の退去交渉で大きな負担が生じます。
定期借家なら何でも解決するわけではない
定期建物賃貸借契約は、書面や事前説明など所定の手続きが必要です。契約期間や再契約の扱いが不明確であれば、トラブルの原因になります。
また、業種や出店条件によっては、テナント側が普通借家契約でなければ出店しないこともあります。
大切なのは、定期借家を一律に押しつけることではありません。建物の状態、出口計画、入居業種を踏まえて契約条件を設計することです。
普通借家の店舗が残り建て替えできなかった実例
くっつーさんが実際に相談を受けたのは、築約50年の4階建てビルでした。2階から4階は住宅、1階にはコンビニが入居していました。
オーナーは老朽化したビルを建て替えるため、上階の住宅をすべて退去させました。しかし、普通借家契約だった1階のコンビニとの交渉がまとまらず、計画は止まってしまいます。
2階から4階の住宅は退去できたんです。残ったのは1階のコンビニだけでした。ところが、ここが普通借家契約だったんです
住宅は退去できたのに、コンビニ1店舗のために建て替えられなかったんですか?
店舗と住宅の「立ち退き」の決定的な違い
住宅の立ち退きでは、引っ越し先や移転費用が主な論点になります。一方、店舗には営業活動、従業員の雇用、その場所で築いた顧客基盤や売上が結びついています。
コンビニにとって退去は、単に別の建物へ移る話ではありません。現在の商圏で続けてきた事業そのものを失うおそれがあるため、オーナーが建て替えたいという事情だけでは折り合いませんでした。
家賃の補填ではなく「売上の補填」を求められる恐怖
動画で紹介されたコンビニの月商は約3,000万円でした。立退料を家賃の6〜12か月分ほどで考えていたオーナーに対し、コンビニ側は売上補填として1億数千万円、約1億8,000万円規模を求めたといいます。
1億8,000万円!? 家賃の補填という金額ではないですね
そうなんです。店舗では、移転費だけでなく、営業が止まる期間や失われる売上まで交渉の対象になり得ます。このオーナーさんは払えず、建て替えを断念しました
金額は案件ごとに異なり、この事例の約1億8,000万円が立退料の相場という意味ではありません。ただ、店舗では営業利益、移転費、内装費、休業、顧客喪失などが交渉材料となり、住宅とは桁の違う請求に発展する可能性があります。
築古ビルほど「定期借家」で貸すべき理由
このオーナーは建て替えを断念した後も、築約50年のビルを維持するための修繕費を払い続けることになりました。入居時に普通借家契約を選んだことで、いざ建て替えようとしたときに動けなくなってしまったのです。
築古ビルで将来の建て替えが見えているなら、募集する段階で定期借家を検討してほしいです。契約期間を建て替え時期から逆算しておかないと、同じことが起こり得ます
定期借家契約は、期間を決めるだけで成立するものではなく、所定の書面や事前説明などの手続きが必要です。実際の契約では、店舗賃貸に詳しい不動産会社や弁護士による確認が欠かせません。
テナント募集前に管理会社へ確認したいこと
住宅賃貸を中心に扱う管理会社では、店舗も住宅と同じ感覚で普通借家を提案することがあります。
くっつーさんは、募集を管理会社へ依頼する段階で、少なくとも次の内容をすり合わせておく必要があると話しています。
- 建て替え予定を踏まえた契約方式になっているか
- 定期建物賃貸借の手続きを正しく行えるか
- 入居業種ごとの投資回収期間を考慮しているか
- 修繕責任や原状回復の範囲が明確か
- 期間満了や再契約の説明方法が決まっているか
「この会社に任せているから大丈夫」で済ませず、なぜその契約方式を選ぶのかまで管理会社に説明してもらうことが重要です。
契約方式に加えて、業種制限、中途解約、設備の負担区分も事前に決める必要があります。詳しい論点は、店舗の賃貸借契約で押さえたい3つの注意点でも解説しています。
よくある質問
Q普通借家契約なら貸主から絶対に解約できませんか?
絶対に解約できないわけではありません。ただし、貸主からの更新拒絶や解約申入れでは正当事由が問題になります。物件の状況、双方が建物を必要とする事情、これまでの経緯、立退料の提示などを含めて個別に判断されます。
Q建て替えは正当事由になりますか?
建て替えの必要性は判断要素になり得ますが、「建て替えたい」という理由だけで必ず認められるとは限りません。老朽化の程度や必要性、借主の営業への影響などを含めて判断されるため、早めに専門家へ相談してください。
Q立退料はいくら必要ですか?
一律の相場で決まるものではありません。賃料、移転費、内装、休業損失、営業への影響など、個別事情によって大きく変わります。動画の事例に出た金額を、別の物件へそのまま当てはめないでください。
Q定期借家契約なら期間満了で必ず終了しますか?
定期建物賃貸借契約として有効に成立し、必要な通知などが適切に行われていることが前提です。手続きに不備があると想定どおりに扱われない可能性があるため、契約時から確認が必要です。
Q築浅物件なら普通借家でも問題ありませんか?
築浅で長期利用を予定しているなら、普通借家が合理的な場合もあります。ただし、売却、自己利用、再開発など別の出口計画があれば、築年数だけで判断しないでください。
Q契約済みの普通借家を定期借家へ変更できますか?
貸主だけの判断で一方的に変更することはできません。借主との合意や契約状況の確認が必要です。居住用と事業用でも論点が異なるため、具体的な変更方法は専門家へ相談してください。
まとめ:築古テナントは出口計画から契約を決めよう
築古テナントを貸すときは、目先の空室解消だけで契約方式を決めないことが重要です。
普通借家契約で長く営業する店舗が入れば、将来の建て替えや売却時に退去交渉が難しくなる可能性があります。一方、定期建物賃貸借契約にも正しい手続きと、入居業種への配慮が必要です。
募集前に建物の残存利用期間と出口計画を整理し、店舗賃貸に詳しい専門家と契約条件を決めておくことが、建物の出口を守ることにつながります。
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