「テナントの入居者って、どうやって選べば失敗しないの?」そんな疑問を持つオーナーさんは多いはずです。条件の良い申込者を選ぶことはもちろん大切ですが、実は数字だけでは見えない“決め手”が存在します。
今回の記事では、実際に物件を購入し、オーナーとして初めて入居者を選んだ経験をもとに、成功のポイントや面接で見極めるコツをお伝えします。読めば、あなたも次の入居者選びに自信が持てるはずです。
この記事でわかること
この記事はこんな方におすすめ
オーナー直伝!入居者選びの基準と成功事例

オーナーとして初めて物件を購入し、実際に入居者を募集した経験から得た学びを紹介します。数字や条件だけでなく、候補者の背景や熱意を知ることで見えてくる選定基準があります。
物件購入から入居者募集までの流れ
やまや:今日はテナント入居者の選び方のコツについて話しましょうか。オーナーさんにとっては気になるテーマですよね。
くっつー:そうですね。僕も実際に神奈川県の駅近にある空き店舗を購入して、オーナーとして入居者を募集したことがあります。その時の体験が参考になると思います。
やまや:以前は会社員としてデベロッパーや仲介側にいたけど、自分がオーナーになってみてどうでした?
くっつー:全然違いました。もちろん会社員時代も真剣にやっていましたが、自分の物件となると「本当に大丈夫かな?」という視点で細かく見るようになりました(笑)。

この時点でくっつーさんは、自らの物件としての責任感やリスク感覚が強まり、従来の仲介目線だけではなくオーナー目線での判断軸を持つようになったといえます。店舗物件は住居と違い、事業の成否が家賃収入に直結するため、より慎重な選定が必要になります
3組の候補者から選んだ決め手とは
やまや:実際の入居希望者は何組くらい来たんですか?
くっつー:1週間で4件内見が入り、3件申込みがありました。1件は少し不安定な方だったので内見前にお断りしましたが、残り3人は全員と面談しました。
やまや:どんな方々だったんですか?
くっつー:1人目は土木関係の個人事業主で、飲食業に転職して自分の店をやりたい方。2人目はネイルサロンを3店舗経営している女性社長で、スナックを開きたいという方。3人目は、この場所で2年間探し続けてようやく見つけたという熱意のある方でした。
やまや:聞いているだけで3人目に惹かれますね。
くっつー:そうなんですよ。結局選んだのはその方でした。ただし家賃条件は一番低かったんです。

オーナーにとっては、高い家賃を提示する入居者は魅力的ですが、長期的な安定経営や空室リスクを減らすためには「熱意」や「地域への思い入れ」も重要な判断材料になります。この事例は、数字だけでなく人柄や事業の背景を見る大切さを示しています
数字だけじゃない!熱意・ビジョンを見極める重要性

入居者選びでは家賃条件や事業計画などの定量的な判断基準が一般的ですが、実際の現場では「この場所でやりたい」という強い想いが大きな決め手になることがあります。
家賃条件よりも熱意を優先した理由
やまや:最終的に3人目を選んだ理由はやっぱり熱意ですか?
くっつー:そうですね。家賃条件ではほかの2人のほうが有利でしたが、その方はこの場所でやりたい理由を具体的に語ってくれたんです。過去に隣の物件も狙っていたけど逃してしまい、2年越しで出会った物件だったそうです。
やまや:それは確かにグッときますね。
くっつー:しかも、その方はシングルマザーの個人事業主で、長年スナックで働いた経験があり「息子が大学を卒業したので、これからは自分の人生を生きるためにこの場所で店をやりたい」と話してくれました。聞いていて胸が熱くなりました。

家賃条件だけで選んだ場合、短期間で退去するリスクや経営の継続性の不安が残ることがあります。一方、熱意やビジョンを持つ入居者は困難に直面しても粘り強く事業を続ける傾向があり、長期的な視点ではオーナーにとってメリットが大きいといえます
面接で感じた事業への本気度と背景
やまや:面接ではどんなことを意識して聞きましたか?
くっつー:事業計画や資金面はもちろんですが、なぜこの場所なのか、将来どうしたいのかをしっかり聞きました。あとは、その人の話し方や態度から本気度が伝わるかどうかも見ましたね。
やまや:やっぱり会ってみないとわからない部分って大きいですよね。
くっつー:そうですね。なかには「家賃を満額出せるから選んでほしい」という方もいましたが、本当に続けられるのかという視点では物足りなさを感じました。

面接は数字では測れない部分を見極める重要な場です。特に店舗物件は顧客との関係性や地域への貢献度も評価ポイントになります。面接の場で入居希望者の本気度や将来像を引き出す質問を用意することが、失敗しない選定につながります
店舗物件特有の入居者選びのポイント

住居物件と異なり、店舗は事業の成否が家賃回収にも直結します。そのため、事前の面談や事業内容の把握がより重要になります。
住居と店舗の違いから考えるリスク管理
やまや:住居と店舗では入居者選びの考え方は変わりますか?
くっつー:かなり違いますね。住居はよほどのことがない限り赤字にはなりませんが、店舗は事業がうまくいかなければ家賃の支払いが滞るリスクがあります。
やまや:なるほど。だから慎重に選ばないといけないわけですね。
くっつー:そうです。特に店舗の場合は、事業の安定性やオーナーとの相性、地域との親和性を見極めないと後々大きなトラブルになる可能性があります。

店舗物件のオーナーは、単に「空室を埋める」ことだけを目標にせず、事業が継続する可能性を見極める必要があります。業種や事業計画、資金状況を確認することはもちろん、地域での需要や競合環境も考慮することが重要です
オーナーが立ち会う内見・面接のメリット
やまや:面接には必ず立ち会っていたんですか?
くっつー:はい。内見の時間をすべて調整してもらい、1時間半で3組全員と会いました。実際に話すことで、その人の人柄や事業にかける熱量がよくわかります。
やまや:そこまでやるオーナーは珍しいですよね。
くっつー:そうかもしれませんが、店舗は事業そのものが関わるので、オーナーが直接会って判断するほうが安心です。

内見や面接にオーナーが立ち会うことで、入居希望者との信頼関係が早い段階で構築できます。また、直接話すことで仲介業者を介した情報だけでは得られない人物像やビジョンを確認できます。これは契約後の関係にも良い影響を与えます
オーナーと入居者の関係づくり

契約はゴールではなくスタートです。オーナーと入居者が良好な関係を築くことで、長期的な安定経営や信頼関係の構築につながります。
長期的な信頼関係を築くためのコミュニケーション
やまや:契約後も入居者さんとの関係って大事ですよね。
くっつー:本当にそうです。入居者は単なる賃借人ではなく、長く続くビジネスパートナーのような存在です。だからこそ、契約後も挨拶やちょっとした会話を大事にしています。
やまや:やっぱりお互いに顔を知っていると、何かあったときもスムーズですよね。
くっつー:そうですね。困ったことがあれば早めに相談してもらえるし、こちらも状況に応じたサポートができます。

店舗経営は予期せぬトラブルや環境変化がつきものです。オーナーと入居者が信頼関係を築いていれば、問題が大きくなる前に対処できます。また、信頼は長期契約の継続や再契約にもつながります
契約後のフォローと応援の姿勢
やまや:今回選んだ入居者さんのお店、オープン後も関わる予定ですか?
くっつー:はい。7月に引き渡し、8月に工事、9月にオープン予定ですので、開店したらスタッフや仲間と一緒にお店を利用して応援したいと思っています。
やまや:それは入居者さんも心強いですね。
くっつー:そう思います。お店の成功はオーナーにとってもメリットになりますから、応援する気持ちは自然に出てきます。

入居者のお店を利用する、SNSで紹介するなど、オーナー側から積極的に応援する姿勢は信頼関係を深めます。結果的に入居者の売上向上や長期契約につながり、オーナーにも好循環をもたらします
この記事から学べる5つのポイント

1. 数字だけではなく熱意や背景も重視する
家賃条件や事業計画などの定量的な指標だけではなく「なぜこの場所でやりたいのか」という熱意や背景も判断材料に加えることで、長期的に安定して事業を続けられる入居者を選べます。
2. 面接で本気度や将来像を引き出す
事業計画や資金面の確認に加え、面接で「将来どんな店にしたいか」「地域との関わり方」を質問し、本気度や事業への姿勢を見極めます。数字には出ない人間性が重要な判断ポイントになります。
3. 店舗物件は事業リスクを意識して選ぶ
住居と違い、店舗は事業の成否が家賃回収に直結します。入居者の業種や地域需要、競合状況を確認し、長く続けられる可能性を見極めることが欠かせません。
4. オーナーが立ち会い直接会話する
内見や面接には可能な限りオーナーが立ち会い、直接入居希望者と話すことで、人柄や事業への熱量を感じ取れます。これにより信頼関係の構築が早まり、契約後のトラブル防止にもつながります。
5. 契約後も応援とフォローを続ける
契約後も入居者の店を利用する、SNSで紹介するなど、オーナー側から応援する姿勢を持つことで信頼が深まります。結果的に売上向上や長期契約に結びつき、双方にメリットをもたらします。