閉店を迎える店舗オーナーにとって、次の入居者のために「スケルトン返し」すべきか、それとも「居抜き」の状態で貸し出すべきかは大きな決断ポイントです。本記事では、判断に迷ったときに押さえたいメリット・デメリットや、かかる費用感、実際の進め方まで詳しく解説します。
この記事でわかること
この記事はこんな方におすすめ
スケルトンと居抜き、それぞれのメリット・デメリットとは?

店舗を閉店した後、次のテナント募集にあたって「スケルトン」と「居抜き」のどちらで引き渡すかは、大きな判断ポイントです。それぞれの違いや特徴をしっかり理解しておきましょう。
スケルトン返しとは?居抜きとの違いを解説
くっつー:オーナーさんから「閉店した後って、スケルトンにして募集するべき?それとも居抜きのまま?」って相談があったんですよ。
やまや:僕は基本的に居抜きのほうがいいと思ってますね。スケルトンって、全部解体してまっさらな状態にするんですよ。壁も床も天井も、何もない状態に戻すんです。
くっつー:なるほど、それってけっこう費用かかりそうですよね。
やまや:めちゃくちゃかかります(笑)。しかもその後、内装を一から作る必要があるから、さらにコストがかさむんですよ。

スケルトン返しとは、借主が店舗の内装をすべて撤去し、構造体のみ(壁・柱・床など)を残して返す契約形態のことです。これに対し「居抜き」は、設備や内装を一部残したまま次の借主に引き継ぐ形です。工事コストや工期の面で、居抜きのほうがメリットがあるケースが多いです
居抜きのメリットは「コスト削減」と「スムーズな引き継ぎ」
くっつー:居抜きで引き渡すと、次の人が使いやすいってのもあるんですか?
やまや:そうなんです。実際、前のテナントさんが出たあと、店内に何も手を加えずに僕が次のテナントさんを案内して、話をつなげたことがありました。
くっつー:スムーズですね!
やまや:はい。前の人と次の人で「これ残します」「これは撤去してください」って直接話ができたんで、お互いに無駄がなく済みましたし、オーナーさんもラクでした(笑)。

居抜きでの引き渡しは、内装を再利用できるため新たなテナントにとって初期費用を抑えられる大きなメリットがあります。また、オーナーにとっても退去や工事の手間が省けるため、コストと時間の節約に直結します
スケルトン工事のデメリットと注意点
やまや:でも契約で「スケルトン返し」って決まっていると、やっぱり全部壊さないといけないんですか?
くっつー:そこもグレーゾーンで、契約には「残置物をオーナーが承認した場合は残せる」って文言があることも多いです。ですので柔軟に対応できるんですよね。
やまや:なるほど、全部壊すと1,000万とかかかるって言ってましたもんね。
くっつー:180坪の店舗をスケルトンにしたら実際にそれくらいかかりました(笑)。

スケルトン工事には、壁・床・天井の撤去や、配管・配線の撤去などが含まれ、坪単価で換算すると約5万円が相場。30~40坪の店舗でも500万円前後の費用が発生することも珍しくありません
オーナーが知るべき「居抜き募集」の進め方と注意点

居抜きで店舗を募集する際には、単に「内装を残す」だけでは不十分です。残地物の整理や次のテナントとの橋渡しなど、オーナーとして配慮すべきポイントがいくつかあります。
居抜きで募集する際の「残地物」対応の考え方
くっつー:たとえば前のテナントがコーヒーショップだったとして、ポットとかそのまま置いていったらどうなるんですか?
やまや:理想は「退去までに次のテナントが決まっている状態」にすることですね。そうすれば直接引き継ぎができて「これは置いていきますね」「これは持っていきます」って話ができるので。
くっつー:そうか、その場で残すものと撤去するものを決められるわけですね。
やまや:そうです。それにオーナー側も自分で何かする必要がなくてラクですし、無駄な工事費もかかりません。

「残地物(ざんちぶつ)」とは、退去時にテナントが置いていく設備や備品を指します。これを次のテナントと事前に調整できると、不要な撤去工事や廃棄費用を回避できます。理想は「ひっくり返せば落ちるもの = 動かせる物品」のみ撤去してもらうスタイルです
テナント同士の引き継ぎで無駄なく進めるコツ
くっつー:じゃあ前のテナントが完全に撤去する前に、次の人と話してもらったほうがいいんですね。
やまや:そうです。実際に僕が仲介した事例でも、店内に何も手を加えていない状態で次の人に見てもらって、その場で「これは残します」「これは撤去します」って話し合ってもらいました。
くっつー:なるほど、それなら両者が納得して進められますね。
やまや:そうですね、オーナーさんも何もせずに済みますし、ゴミも出ずに環境的にもエコ(笑)。

居抜きでの引き継ぎは、前のテナントと次のテナントの間で直接調整するのがベストです。不動産会社が仲介に入ることで、必要な備品や不要な物品を明確にし、双方納得のいく形での引き渡しが実現します
居抜きで貸す際にオーナーがやるべきこと
くっつー:オーナーとしては何をしておけばいいんでしょう?
やまや:まずは、テナントが退去するタイミングで「次の入居者を早めに見つけること」です。早ければ早いほど、スムーズに引き継げます。
くっつー:なるほど、じゃあ我々のような不動産会社に早めに相談するのがいいと。
やまや:まさにそれですね。できれば解約通知の段階でご相談いただくのが理想です。

居抜き物件でスムーズに次のテナントを見つけるためには、退去の前段階から動き出すことが重要です。タイミングを逃すと、せっかくの内装が使いづらくなったり、オーナー負担での撤去が必要になる場合もあります
スケルトン工事の費用はどれくらい?実例でわかるコスト感

スケルトン工事を選ぶ際、最も気になるのが「費用がどれくらいかかるのか」という点です。実際の事例をもとに、相場感や費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
スケルトン化にかかる坪単価は?実例で1,000万円の工事も
やまや:スケルトンにする工事って、実際いくらぐらいかかるんですか?
くっつー:ちょうど最近、僕が買った180坪の物件をスケルトンにしたんです。いくらかかったと思います?
やまや:うーん、500万円くらいですか?
くっつー:残念(笑)。実際は約1,000万円かかりました!
やまや:マジですか!?そんなにするんですね……
くっつー:はい、坪単価で言うと5万円くらい。壁も天井も全部剥がして、看板も撤去して、それだけで1,000万円です。

スケルトン工事の相場は、坪単価で約5万円前後。工事内容によってはこれ以上になることもあります。看板や什器の撤去、内装の完全な解体には専門業者の作業が必要で、意外と高額になりがちです
内装工事費用との比較で考える「居抜きの経済性」
やまや:スケルトンにして、さらに内装工事もするってなると、コストが倍になりますよね?
くっつー:そうなんです。壊して1,000万円、そこからさらに内装工事で新しく作ると、もっとかかります。
やまや:ってことは、居抜きのほうが圧倒的に安く済むってことですね。
くっつー:そう。例えば壁紙だけ変える、照明だけ新しくするっていう軽微な工事で済むなら、そのほうが絶対にお得です。

スケルトン後の内装工事には、店舗の業態やデザインによってさらに高額な費用がかかります。一方、居抜きであれば既存の設備や内装を活かせるため、初期投資を大幅に抑えることが可能です
スケルトンにする前に知っておくべき費用相場
やまや:でも、小規模な店舗でもやっぱり高いんですか?
くっつー:はい。例えば40坪の店舗でも、スケルトンにすると約200万円くらいかかります。内装が凝っているとさらに上がりますね。
やまや:それなら、なるべく壊さずに使えそうな状態にしてもらったほうがいいですね。
くっつー:そう。理想は床・壁・天井がきれいに残っていて、動かせる備品だけ撤去されている状態。それなら次のテナントも入りやすいです。

一般的な店舗(30~40坪)でも、スケルトン工事費用は数百万円かかることが多いです。撤去の範囲が広がればその分コストも増えるため、事前に正確な見積もりを取っておくことが重要です
理想の退去方法とテナント募集のベストタイミング

テナントが退去する際、どこまで原状回復すべきか、また次のテナント募集をいつから始めるべきかは、空室期間や工事費用に大きく関わります。理想的な対応方法を見ていきましょう。
稼働物撤去だけで居抜き可能?理想の内装状態とは
やまや:じゃあ、どの程度まで撤去してもらったら理想的な居抜き状態になるんですか?
くっつー:一番いいのは「動かせるもの = 稼働物」だけ撤去してもらって、カウンターや壁・床・天井は残す状態ですね。
やまや:確かに、フライパンとか椅子がごちゃごちゃ残っていたら借りる方も引いちゃいますもんね(笑)。
くっつー:そうなんです。よくXとかで「鍋が山積み」みたいな居抜き写真見ますけど、あれだと新しい人は入りづらいですから。

稼働物(イス・鍋・テーブルなど)が撤去されていて、固定物(カウンター・床・壁・天井)が整った状態は、最も居抜きとして理想的です。最低限のクリーニングと軽微な修繕で再利用でき、次の入居者にも好印象を与えます
テナント解約前に次の入居者を探すメリット
くっつー:でも、退去したあとに次を探すと、空室期間が長くなりません?
やまや:そのとおりです。だからこそ、解約通知が来た段階で動くのが一番です。僕らに早めに相談してもらえれば、退去前に次の人を見つけて引き継げますから。
くっつー:それってオーナーにとってはかなりありがたいですね。
やまや:そうなんです。内装がそのまま残っている間に内見できると、新しいテナントさんのイメージも湧きやすいですし。

退去後に空室が続くと、賃料収入が途絶えるだけでなく、スケルトン工事などの追加費用もかかる可能性があります。事前に不動産会社へ相談し、次のテナント探しを早期に始めることで、空白期間を最小限に抑えることができます
早期相談が鍵!オーナーがやるべき一歩
くっつー:じゃあ結局、オーナーが一番最初にやるべきことってなんですか?
やまや:「早めに相談すること」に尽きますね。僕たちみたいな不動産会社に連絡いただければ、退去から募集、引き継ぎまで全部お手伝いできますから。
くっつー:なるほど。閉店って決まった瞬間が勝負ですね。
やまや:まさにそのとおりです。閉店が決まった段階でご相談いただければ、居抜きでの引き継ぎも可能ですし、スムーズな移行ができます。

閉店が決まったら、すぐに信頼できる不動産会社に相談するのが最も大切です。準備期間を確保することで、居抜き物件の魅力を最大限に活かし、次のテナントとのスムーズな連携が可能になります
この記事から学べる5つのポイント

1. スケルトン工事は高額!居抜きのほうが費用負担を軽減できる
スケルトンにする場合、坪単価5万円ほどかかり、180坪で約1,000万円の事例もありました。一方、居抜きであれば既存の内装を活かせるため、費用を抑えつつ、工事の手間も最小限にできます。
2. 居抜きはスムーズな引き継ぎでオーナーもテナントもラクになる
前のテナントと次のテナントが直接「残す」「撤去する」ものを話し合えると、双方が納得した状態で引き渡しができます。オーナーも中間対応が減り、管理の負担が大幅に軽くなります。
3. 残地物は事前調整が重要!印象と契約率に直結
鍋や椅子などごちゃついた残置物があると、内見者の印象が悪くなりがちです。最低限、動かせるものは撤去し、カウンターや壁・天井などは清潔な状態で残すのが理想です。
4. 解約通知が出たらすぐに動くのが成功のカギ
退去が決まってから次の募集を始めるのではなく、解約の知らせが来た時点で次テナントの募集を開始することで、空室期間を短縮し、スムーズな居抜き移行が可能になります。
5. 早期相談が最重要!信頼できる不動産会社に即連絡を
閉店の決断をしたら、まずは不動産会社に相談を。退去から募集、引き継ぎまで一括で支援してもらえることで、時間・コスト・労力のすべてを最小限に抑えられます。