「この物件、どのテナントに貸すべきだろう?」

複数の入居希望者が現れたとき、オーナーとして頭を悩ませた経験はありませんか?今回は、テナントを選ぶ際に失敗しないための“見極めのコツ”を、実際の経験をもとにわかりやすく解説していきます。

チェーン店だからといって安心とは限らず、個人事業主でもしっかりとしたビジョンがある人は大きな成功を収める可能性があります。私たちが現場でどのように判断し、実際にどんなプロセスを踏んできたのかを、リアルな事例とともにお届けします。

この記事を読めば、面談の際にどこを見ればよいか、どんな質問をすれば経営者の本気度を見抜けるかが明確になります。迷いや不安を感じているオーナーの方には、きっと参考になるはずです。

目次

この記事でわかること

  • チェーン店と個人店、どちらを選ぶべきかの判断基準
  • テナント審査で見るべき財務書類や事業計画書のポイント
  • 面談時にチェックすべき経営者のビジョンと集客戦略
  • 成功している店舗オーナーの実例紹介

この記事はこんな方におすすめ

  • 初めてテナントを貸し出すオーナー
  • 入居希望者が複数いて選びきれない方
  • 地元の街づくりに貢献したいと考える不動産オーナー
  • リスクを最小限に抑えて安定した賃貸運営をしたい方

テナント選びで迷ったら|チェーン店か個人店かの判断基準

テナント募集をかけると、思いのほか複数の申し込みが来ることがあります。そんなときに「どこに貸すのが正解なんだろう?」と悩むオーナーは少なくありません。

ここでは、実際の判断基準やリアルな体験談をもとに、失敗しないテナントの見極め方を紹介していきます。

大手チェーンでも倒産のリスクはある?

やまや:じゃあ今日はですね、テナントの選び方について話していきたいと思うんですが、例えば複数の入居希望があったときって、どう選べばいいか迷いますよね。よくあるのが、名前を聞いたことのあるようなチェーン店と、これから開業する個人事業主の方が同時に申し込んでくるケースです。どっちに貸すべきか、悩ましいですよね。

くっつー:確かに迷いますよね。でも、やっぱりチェーン店のほうが安心感はありますね。与信力もありそうだし。私もオーナーだったら、まずはチェーン店に貸したいと思います。ですが最近では、チェーン店でも普通に潰れる時代です。だから「大手だから安心」とは言えないのが現実です。

やまや:確かにそれはありますね。

くっつー:ですので、チェーン店だからといって無条件でOKにするのではなく、財務諸表をきちんと見ることが大事です。純資産が出ているかどうかは最低限チェックしましょう。

くっつー

テナント選びの第一歩として多くのオーナーが「知名度」や「チェーン店であること」を重視しますが、近年では大手でも経営破綻するケースが相次いでいます。特に飲食や教育業界では、急拡大の末に資金繰りが悪化することもあるため、財務内容の確認は不可欠です。テナントの規模に惑わされず、数字をもとに冷静な判断を下すことが求められます

この章のまとめ
  • チェーン店だからといって安全とは限らない
  • 財務諸表(特に純資産)をチェックする習慣を持つ
  • 経営体力を過信せず、倒産リスクを冷静に見極める

個人事業主でも信頼できるケースとは?

テナント選びの際に、個人だからといって一律に除外するのは早計です。個人事業主でも、しっかりとした準備と戦略を持っていれば信頼に足るパートナーとなり得ます。

やまや:じゃあ個人店ってやっぱりリスクが高いんでしょうか?

くっつー:一概には言えません。例えば、個人でもフランチャイズに加盟している方なら、一定の運営ノウハウがあって体制もしっかりしている可能性がありますよね。

やまや:あーなるほど。それだけで判断はできないんですね。

くっつー:そうなんです。事業の内容も含めて「何をやるか」「どうやってやるか」を見るほうが大事ですね。例えば個人で「蕎麦屋」をやろうとしている人が来たとして、それが何年も続くような堅実な事業なら安心材料になります。

くっつー

個人店のリスクは「個人かどうか」ではなく「事業内容と経営者の準備・姿勢」によって大きく左右されます。たとえ小規模でも、継続性や地域性に根ざしたビジネスであれば、安定した運営が見込めます。オーナーとしては、事業計画書や創業計画をもとに見極める力が求められます

この章のまとめ
  • 個人でもフランチャイズ加盟や実績がある場合は安心できる
  • 「誰がやるか」よりも「何をやるか」を重視
  • 創業計画や過去の実績を資料で確認する

重視すべきは「どんな事業をするか」

結局のところ、テナントの「中身」である事業の中身が最大の判断ポイントになります。流行りものに飛びつくのではなく、長く愛されるかどうかを見極める目が必要です。

くっつー:あと重要なのは「何の業種か」ってところです。たとえば、チェーンのタピオカ屋が来たとします。でも流行りものって一過性になりがちで、長期的に見れば蕎麦屋のほうが続く可能性が高いんですよね。

やまや:確かに(笑)。タピオカって一時期すごいブームだったけど、今はもうそんなに……。

くっつー:そうそう。ですので業種を評価するのも大事で、事業計画書を出してもらうことは本当に重要です。

くっつー

事業の継続性は、業種そのものに大きく左右されます。流行を狙った店舗は短期的な集客には向いていますが、オーナーとして長期的な賃貸契約を望むならば、安定した需要のある業種(例:蕎麦屋、美容室、保育施設など)を選ぶほうが安全です

この章のまとめ
  • 業種の継続性を重視して判断する
  • 一時的なブームに惑わされず本質を見る
  • 事業計画書から将来像とリスクを読み取る

見極めポイント①|財務・事業内容の確認方法

見た目や印象だけで判断せず、しっかりと中身を確認することがテナント選定では非常に重要です。ここでは、どんな書類を確認し、何を基準に判断すればよいのか、具体的なポイントを解説していきます。

決算書・純資産・事業計画書のチェック方法

やまや:でも正直、財務書類って見慣れてないと難しいですよね。

くっつー:そうですね。けど最低限「決算書」と「事業計画書」は出してもらいたいです。個人の方でも作っているはずですから。

やまや:ああ、創業計画書とかもありますもんね。

くっつー:はい。なかでもバランスシートを見て「純資産」がどれくらいあるかは要チェックです。あとは事業計画書で、どんな事業をやるのか、資金の使い方、収支の見通しなどを確認します。

やまや:なるほど。数字の部分だけじゃなく、事業の方向性も見るってことですね。

くっつー

テナントの経営状態を見極める上で「決算書」や「事業計画書」は非常に有効な資料です。特に、バランスシートにある「純資産」は、その企業の健全性を測る重要な指標です。また、事業計画書では資金繰り、売上見込み、経営戦略などが書かれているため、貸す側としての不安を解消する材料になります

この章のまとめ
  • 決算書・バランスシートを提出してもらう
  • 純資産の額をチェックして経営の健全性を確認
  • 数字だけでなく、事業の中身や方向性も見る

タピオカか蕎麦か?流行より「継続性」を見る視点

やまや:でも事業計画書って、読むのが大変だったりもしますよね。

くっつー:そうなんですけど、そこに「継続性」が見えるかどうかがすごく大事なんです。流行りに乗っかっただけの業種より、長く続きそうなもののほうが安心です。

やまや:さっきの話で出たタピオカと蕎麦みたいなやつですね(笑)。

くっつー:そうそう(笑)。今後も安定して需要がありそうか、地域に根ざしてやっていけそうか、そういう視点でチェックしてほしいです。

くっつー

流行を取り入れたビジネスは話題性こそありますが、オーナーとしては「長期的に続くか」を見極める視点が必要です。事業計画書のなかに「いつ撤退するか」「どう拡大するか」などの戦略があるかどうかも重要な判断材料になります

この章のまとめ
  • 流行業種は短期的な集客には良くても長期契約には不向き
  • 地域性・安定性のある業種のほうがリスクは低い
  • 事業計画書から中長期的なビジョンを読み取る

既存店舗の評価とレビューサイトの活用法

やまや:もし既存店があるなら、その実績も見られますよね?

くっつー:そうですね。例えば2号店・3号店だとしたら、Googleや食べログで口コミもチェックできます。どれくらい埋まっているか、評判はどうかっていうのは簡単に確認できますから。

やまや:そういうのを見るだけでも、ある程度の運営レベルがわかりそうですね。

くっつー:はい。あと、面談も必ずしてます。特に個人店だと経営者のビジョンを聞くのがすごく大事ですから。

くっつー

インターネット上のレビューは、実際の集客状況やサービス品質を把握する手段として非常に有効です。オーナー自身が利用者目線で店舗を確認することで、運営レベルや将来性の判断につながります。また、経営者との面談でビジョンや集客方法を確認することで、安心してテナント契約を結ぶことができます

この章のまとめ
  • 既存店舗のレビューをGoogleや食べログでチェック
  • 実際にお店を利用することで運営の質を確認
  • 経営者との面談で理念や戦略を直接聞く

見極めポイント②|経営者との面談で見るべき点

書類や数字だけでは見えない「人となり」や「事業への本気度」は、実際に会って話すことでしか感じ取れません。ここでは、面談時にオーナーとしてチェックすべきポイントを具体的に紹介していきます。

フランチャイズか独自ブランドか?事業ビジョンを聞き出す

やまや:じゃあ例えば、個人の人がフランチャイズで出店するのと、独自ブランドで出店するのって、どっちがいいんですかね?

くっつー:それも一概には言えないんですけど、私だったらどっちの店舗も実際に見に行きますね。できるだけ利用してみます。

やまや:あ、それすごい大事ですね。利用してみるといろいろ見えてくる。

くっつー:そうなんですよ。フランチャイズでも運営レベルが低いと、あんまり意味ないですし。だから「どこがやっているか」より「どう運営されているか」を見ることが大切です。

くっつー

フランチャイズであること自体が強みになるわけではなく、実際に運営している人の能力や姿勢が成功のカギを握ります。面談では「どんなビジョンを持っているか」「地域にどう貢献したいか」など、数字では測れない部分を掘り下げることが重要です。小さな会社でも理念がしっかりしていれば、信頼できるテナントになり得ます

この章のまとめ
  • フランチャイズでも運営実態を見て判断する
  • 実際に既存店を利用し、接客や雰囲気を確認する
  • 経営者のビジョンと事業への熱意を聞くことが重要

実際に利用して判断|「ユーザー目線」を持つ重要性

やまや:でもオーナーがそこまで見に行くのって、ちょっとやりすぎかなって思う人もいそうですよね。

くっつー:いや、むしろやるべきです。前職で私も言われましたから。「お前、その店利用したことあるのか?」って(笑)。

やまや:(笑)。確かに、自分が利用してみて「これはイケる」と思えるかどうかって、すごく大事ですよね。

くっつー:そうです。実際に足を運んで、自分が納得できるかどうかで判断するのが一番確実です。オーナーは“お金を預けるパートナー”を選んでるわけですから。

くっつー

テナントを選ぶというのは、単なる契約相手を決めるということではなく「共に地域をつくるパートナーを選ぶ行為」です。実際に利用してみて、サービスや商品に納得できるかどうかを確認することで、感覚的にもリスクを減らすことができます。ユーザー目線を持つことで、事業の実態をより具体的に判断できます

この章のまとめ
  • テナントを利用することで運営品質を実感できる
  • “借り手”ではなく“地域のパートナー”として選ぶ意識が必要
  • 感覚的な「いいかも」を大切にすることで失敗を防げる

貸主自身が利用者として「体験」するメリット

やまや:じゃあ例えば、まだ実店舗がない人だったらどう判断すればいいですか?

くっつー:その場合は、経営者との面談がより重要になりますね。どんなビジョンを持っているか、どういう事業をやろうとしているのかを深掘りして聞きます。

やまや:なるほど。たしかに「顔を見て話す」っていうのは、情報量が全然違いますよね。

くっつー:はい。あと、私が実際に店舗を貸したケースでも、最初はホームページすらない会社さんでした。でも、しっかりと面談して、事業内容や過去の実績、従業員の有無、オフィスの様子まで確認しました。それで「この人なら大丈夫だ」と思って貸したんです。

くっつー

「情報が少ない=不安」ではなく、情報がないからこそ直接会って話し、信頼できるかどうかを判断する必要があります。特に初出店の場合、実店舗の雰囲気は体験できませんが、代わりに経営者の人柄や熱意、計画の具体性などから可能性を読み取ることができます

この章のまとめ
  • 面談で事業の全体像と経営者の本気度を確認する
  • 実績がなくても、準備や考え方で信頼は築ける
  • 貸す側としても「納得して選ぶ」姿勢が大切

成功事例から学ぶ|オーナーが実践した選定プロセス

どれだけ理論や判断基準を理解していても、実際に自分の物件に申し込みが来たとき、即断するのは難しいものです。ここでは「テナントの窓口」のくっつーがオーナーとしてテナント選びをした実体験を、プロセスごとに具体的に紹介していきます。

実際に面談 → 資料確認 → 判断したリアルな流れ

やまや:さっきお話されていた「実際に貸したケース」って、もう少し詳しく聞いてもいいですか?

くっつー:ああ、はい。ちょうど最近のことで、本当に学びが多かったんです。申込みが来たのは株式会社だったんですが、ホームページもなくて、最初はちょっと不安でした。

やまや:それは……確かに一瞬ひるみますね(笑)。

くっつー:(笑)。でも、まず社長さんと面談したんです。そこでどういう事業をやってきたのか、これからどんなことをやろうとしているのかを丁寧に聞きました。さらに実店舗を持っているか、オフィスはあるのか、従業員はいるのか、そして決算書も出してもらいました。

やまや:そこまで確認していたら、かなり安心感ありますね。

くっつー:そうですね。最終的には「この人ならいけるな」と思えて、貸す判断をしました。

くっつー

信頼できるかどうかの判断は「法人か個人か」ではなく、いかに情報を開示し、誠実に対応してくれるかで決まります。面談でのやりとり、提出された資料の内容、そしてオーナー自身の直感を掛け合わせて最終判断をすることが、成功するテナント選定の鍵になります

この章のまとめ
  • 面談では事業内容・ビジョン・過去の経歴を詳細に確認
  • 決算書やオフィス環境などの実態もチェック
  • 信頼できると感じたら、小規模でも前向きに検討

社長のビジョンや創業背景も貸出判断の材料に

やまや:でも、ビジョンって抽象的じゃないですか?それをどう判断するんですか?

くっつー:そこは話を深掘りしていくんです。たとえばその社長さんは、もともと買取り事業をしていて、それを実店舗に発展させていくという計画を持っていたんです。すでに従業員もいて、ちゃんとオフィスも構えてました。

やまや:なるほど。それなら規模が小さくても、将来性は感じられますね。

くっつー:しかもその人、理想やビジョンを言語化できていたんですよ。こういうエリアで、こういう人たちに向けて、こういう価値を提供していきたいって。それを自分の言葉で語れる人って、やっぱり信頼できると思います。

くっつー

ビジョンは経営者の「想い」や「理念」を可視化したものです。言語化できるということは、具体的な行動計画がある証拠でもあります。資料では測れない要素だからこそ、面談のなかでしっかりと見極めることが、オーナーとしての重要な仕事になります。

この章のまとめ
  • 創業背景と現状の準備状況を具体的に聞く
  • ビジョンを自分の言葉で語れる人は信頼できる
  • 熱量や信念を感じられるかが最終判断の鍵

信頼できる管理先との連携でオーナーも安心

やまや:でも全部を一人で判断するのって、けっこう負担ですよね。

くっつー:そうなんですよ。だから私たちのような「テナントの窓口」みたいなところを活用してほしいなと思ってます。実際、私が貸した案件でも、建物のオーナーさんが別にいて、私がその管理サイドに立つような形だったんです。

やまや:あ、それなら貸す側も安心ですよね。ちゃんと説明してくれる人が間に入ってくれると。

くっつー:そうなんです。小さな会社でも「こういうビジョンを持っていて、こういう実績があるんです」って、きちんと説明することで、建物オーナーさんも納得してくれました。結果として、全員が納得した状態で契約できました。

くっつー

テナント選びはオーナー一人で背負う必要はありません。信頼できる管理会社やサポート機関と連携しながら、資料の精査や面談の同席などを通して、より安心な判断が可能になります。共有できる情報が多いほど、オーナー・管理側・借主の三方が納得できる契約に近づきます

この章のまとめ
  • 管理会社と連携して判断材料を整理する
  • 借主の想いを建物オーナーにも丁寧に伝える
  • すべての関係者が納得するプロセスを構築する

この記事から学べる5つのポイント

1. チェーン店か個人店かより「中身」で判断する

一見安心感のあるチェーン店でも倒産リスクはあり、個人事業主でも堅実なビジネスであれば長期安定が期待できます。知名度やブランドに頼らず、事業の内容と継続性を重視して見極めましょう。

2. 財務書類と事業計画書の提出は必須条件にする

決算書、バランスシート、事業計画書は、経営の健全性や将来性を測るための重要な資料です。特に純資産のチェックは、資金繰りや事業継続の信頼性を判断するうえで欠かせません。

3. 経営者のビジョンや理念を面談で深掘りする

数字や資料では見えない「本気度」や「熱意」は、直接話すことでしか得られません。面談では、どんな想いで事業に取り組んでいるか、自分の言葉で語れているかを丁寧に確認しましょう。

4. 既存店やレビューを「ユーザー目線」でチェックする

もし既存店があれば、Googleレビューや実際の利用でサービスの質を体験しましょう。店舗の運営状態や接客の丁寧さなど、書面だけではわからない多くの情報が得られます。

5. 専門家や管理会社と連携し、客観的な判断材料を揃える

すべてを一人で抱え込む必要はありません。信頼できるパートナーと連携することで、テナント選びに安心感と説得力が加わり、関係者全員が納得できる契約につながります。