「いつか自分のビルを持ちたい」ーーそんな夢を抱きながら、実際にビル購入に挑戦した1人の挑戦者がいます。

今回のエピソードでは「くっつービル」と名付ける予定だった、とある海老名のビル購入をめぐるリアルな体験談をお届けします。物件を見つけたときのワクワク感、収支シミュレーションの手応え、そして購入を断念せざるを得なかった決定的な理由……。

これから店舗物件を買いたい人、不動産投資に興味がある人にとって、貴重な学びが詰まった内容です。

この記事でわかること

  • 実際のビル購入プロセスと必要資金の目安
  • 見逃しがちな「雨漏り」「土地評価」の落とし穴
  • 銀行融資の審査で見られるポイント
  • 空室率と利回りから見る収支の見通し方

この記事はこんな方におすすめ

  • これからビル購入や店舗運営を始めたい方
  • 空きテナント活用を検討している不動産オーナー
  • 不動産投資に興味があるけど、何から始めればいいかわからない方

挑戦のきっかけと「くっつービル」購入までの流れ

物件を探すなかで偶然出会ったのが「くっつービル」候補だった海老名のビル。なぜその物件に惹かれたのか、そして購入を決意するまでのリアルな背景を語ります。

海老名で出会った運命のビル、購入を決意するまでの背景

やまや:今日はちょっと小耳に挟んだんですけど、くっつービルを買うっていう、なんかそんな話があるって……。名前を「くっつービル」にしたいみたいな?

くっつー:はい、実は3週間か1か月くらい前に、ある物件の話をもらって。場所は「海老名」なんですけど、ちょっと縁があるエリアなんですよね。

やまや:お、縁があるんですね。

くっつー:そう。だから攻めようと思って(笑)。地元の不動産屋さんから「こういうビルが出てますよ」と紹介されたんです。

やまや:どんなビルだったんですか?

くっつー:3階建てのテナントビルで、金額は6,000万円。1階が就労支援系のデイサービスが入ってて、2階は空室。3階は2部屋に分かれてて、1つが空室、もう1つが整骨院です。

やまや:ワンフロアどれくらいあるんですか?

くっつー:ワンフロア大体30坪。3階は15坪ずつみたいな感じで分かれてました。

くっつー

海老名駅から徒歩15分、ロードサイドに立地するこのビルは、実需系テナントが入居する実用性の高い物件。地方都市でのテナントビル購入では、収益性だけでなく立地と用途のバランスが鍵になります

この章のまとめ
  • 海老名の3階建てビルに購入チャンスがあった
  • 1階はデイサービス、3階には整骨院が入居
  • ワンフロア30坪、空室も多く利回り向上の余地あり

物件のスペックと投資判断、空室から見えたポテンシャル

やまや:物件としてはどうだったんですか?

くっつー:半年間売れてなかったみたいで、大幅に値引き交渉できそうだったのが魅力でした。6,800万円が5,900万円まで下がりそうだったんです。

やまや:それはだいぶ安いですね。

くっつー:表面利回りも、現状の入居率で4.8%。空室を埋めれば13%までいけそうで「これは強い」と思ったんです。店舗の入居付けは得意だし、相場感もあるので「これはいける」と。

やまや:その場で申し込んだんですか?

くっつー:内見してすぐ申し込み出しました。正直、これはいいと思ったんですよね。

くっつー

物件価格の交渉や空室の利活用で利回り13%を見込めるのは高水準。テナントビルは入居率が命ですので、店舗付けのノウハウがあるかどうかで勝敗が決まります

この章のまとめ
  • 半年間売れ残っていたため価格交渉がしやすかった
  • 表面利回り4.8%、満室で13%を想定
  • 空室の活用に自信があったため即申込

「幻」となった理由とは?購入断念の決定的な要因

順調に見えた「くっつービル」購入計画。しかし、意外な落とし穴が待っていました。

雨漏り、そして銀行融資の壁。2つの大きなハードルにより、このビル購入は“幻”となってしまいました。

雨漏りと修繕費700万円、予想外のリスク

やまや:でも、なんで結局買わなかったんですか?

くっつー:理由は2つあります。まず1つ目は雨漏りですね。2階の天井から雨漏りしていたんです。

やまや:2階から?珍しいですね。

くっつー:そうなんですよ。最初は100〜200万円くらいで直るかなと思っていたんです。でもオーナーさんから「前に見積もったら700万円かかる」と言われて。

やまや:うわ、それは高い……。

くっつー:原因もよくわからなくて、2階と3階の配管からかもしれないし、雨水が回り込んでるかもしれない。要するに、修繕にリスクが大きすぎたんです。

くっつー

雨漏りはビル価値を大きく損なうリスク要因。修繕費だけでなく、原因特定の難しさや、入居者への影響など、二次的リスクも考慮する必要があります

この章のまとめ
  • 2階天井からの雨漏りが発覚
  • 修繕費は700万円と高額
  • 原因が特定できず、不確実性が高かった

銀行融資金額の問題とその盲点

やまや:じゃあもう1つの理由は?

くっつー:銀行融資は出るんですが、金額の問題がありました。何件か回ったんですが、評価が低くて……。

やまや:評価って?

くっつー:土地の評価が3,700万円から3,800万円くらいで、建物が1,700万円。銀行は基本的に土地を重視して見るので「4,000万円までしか出せない」と言われました。

やまや:6,000万円のうち4,000万円までしか融資されないと、自己資金がかなり必要になりますね。

くっつー:そう、3割出してくださいと言われて、1,800万円必要に。想定では600万円くらいで考えていたので、それは無理だなって。

くっつー

銀行は土地の資産価値を重視するため、狭小地や建物に資産性が乏しいと融資が通りにくくなります。事前に金融機関の評価視点を知っておくことが重要です

この章のまとめ
  • 銀行からの評価が土地ベースで低かった
  • 想定外に高い自己資金(1,800万円)を求められた
  • 資金計画と融資戦略の甘さを痛感した

それでもビルオーナーを目指す理由と今後の展望

購入には至らなかったものの「くっつービル構想」は終わりではありません。理想のビルオーナー像に向けて、次の一歩をどう踏み出していくのか、そのビジョンを語ります。

「ビルを所有したい」という想いと理想の物件像

やまや:じゃあ、次に買うとしたらどういう物件狙っているんですか?

くっつー:今度一棟のビルですね。まるごとビルがいいです。

やまや:ビルのオーナー、響きがかっこいいですね(笑)。

くっつー:そうそう(笑)。「ビルのオーナーです」って言いたい。それだけでテンション上がりますし。

やまや:「くっつービル」ってGoogleマップにも登録しちゃうとか?

くっつー:それやりたいです(笑)。プレートも作って、YouTube撮影もしたい。

くっつー

一棟ビルは区分所有と違って管理権限が全体に及ぶため、運営自由度が高いのが魅力です。また「オーナー」としての責任と発信力を兼ね備えた理想形でもあります

この章のまとめ
  • 次は区分でなく、一棟まるごとのビルを狙う
  • 「ビルオーナー」になりたいという夢が強い
  • 名称や地図登録も含めた発信力を意識している

オーナー目線を持つことの重要性と今後のチャレンジ

やまや:今回の経験を経て、今後の展望は?

くっつー:今回は買えなかったけど、すごくいい経験でした。物件の見方も変わったし、融資の視点も知れたし。

やまや:店舗物件を扱う「テナントの窓口」としても、オーナー目線って大事ですよね。

くっつー:ほんとそれ。貸す側の気持ちがわかるようになりたい。今後もビルを探して、挑戦を続けたいです。

くっつー

不動産仲介や店舗コンサル業において、オーナー視点を持つことは交渉力や信頼性に直結します。実践から得た経験は、現場で活きる“生きた知識”となります

この章のまとめ
  • 今回の失敗から多くの学びを得た
  • オーナーの視点を業務にも活かしたい
  • 今後もビル購入への挑戦を継続予定

この記事から学べる5つのポイント

1. 立地と物件用途の相性を見極める大切さ

海老名駅から徒歩15分のロードサイド物件に就労支援系デイサービスや整骨院が入居していた点は、地域性と業種の相性を象徴しています。立地だけでなく、周辺ニーズに合ったテナント構成を見抜く力が求められます。

2. 売れ残り物件こそ交渉のチャンスがある

半年間売れ残っていたことで、物件価格の大幅な値下げ交渉が可能でした。売主の事情を理解しながら、相場や利回りから冷静に投資判断をおこなうスキルが重要です。

3. 修繕リスクは「不確実性」込みで判断すべき

雨漏りが発覚し、修繕費用の見積りが700万円に跳ね上がった本案件。不動産のリスクは金額だけでなく「原因が不明」な点が最大の懸念になります。想定外の修繕は収支バランスを一気に崩すため、見極め力が試されます。

4. 融資審査では土地の評価がカギを握る

銀行融資では「土地の評価」が重視されます。建物よりも土地を重視する金融機関の視点を知らなかったことが、結果的に資金計画を狂わせました。金融機関の評価軸を理解しておくことは必須です。

5. オーナー目線の経験が、店舗運営にも活きる

くっつーさんが語った「ビルを所有したい」という強い想いは、オーナーとしての視点が事業全体をどう変えるかを教えてくれます。借りる側ではなく、貸す側としてのリアルな気づきが、今後の事業展開に大きく影響します。