「2025年も残り3か月か……」そんな声が聞こえる今日この頃。今年も全国各地でさまざまな業種が新たな出店を展開し、街の風景を少しずつ変えてきました。
今回は、店舗開発を支援する「テナントの窓口」として全国で不動産契約を手がけるくっつーとやまやが、今年勢いを感じた業種TOP5を発表します。
この記事は〈前編〉として、第5位から第3位までの業種をピックアップし、現場のリアルな声と共に出店トレンドを徹底解説します。毎年恒例のこの企画。2025年のトレンドと出店の裏側を、リアルな会話と共に深掘りしていきます。
このランキングには、データや統計には表れない「現場の実感」が詰まっています。今後の出店戦略や物件活用のヒントにもなるはずです。
この記事でわかること
この記事はこんな方におすすめ
それでは2025年に出店意欲が高かった業種TOP5を、リアルな現場の声とともにご紹介します。ランキング第5位から見ていきましょう。
第5位:焼肉業界は明暗分かれるも「強い企業」が加速出店

焼肉業界は2025年も活発な動きを見せました。一方で閉店も多く、業界としての「二極化」が進んでいるのが現状です。今回は、そのなかでも圧倒的な出店数を誇った企業と、背景にある戦略を語っていただきました。
駅前型でも成功する「焼肉きんぐ」の勢い
くっつー:第5位は「焼肉屋さん」ですね。
やまや:あ、焼肉屋さんですか。でも最近って閉店のニュースもよく見ません?
くっつー:そうなんですよ。実際に閉店も多いんですけど、出店もめちゃくちゃ多かったんですよね。今年は特にそれを感じました。
やまや:なるほど。やっぱ強いところと弱いところの差が出てきているんですね。
くっつー:そうそう。例えば「焼肉きんぐ」はその最たる例ですよね。どんどん出店しているし、駅前型も成功しているんですよ。
やまや:ロードサイドのイメージだったけど、駅前も好調なんですね。
くっつー:私、川崎駅近くのお店に行ったんですけど、平日の昼すぎなのに満席で2~3組待ちでしたよ(笑)。学生が多い印象でした。
やまや:えー、学生が昼間から?コースって3,000〜4,000円くらいしますよね?
くっつー:そうそう。お金を持っている学生が多いのかも(笑)。でも、それだけ「焼肉きんぐ」の満足度が高いんでしょうね。
やまや:質がいいんですね。
くっつー:そうなんです。コースも3種類あって、特に「ツボ漬けカルビ」が最高で(笑)。質に対してコスパがすごくいい。
やまや:しかも都心の駅前でもやっていけるって、相当な強みですよね。
くっつー:実際、ほかの焼肉店が撤退した場所に、焼肉きんぐがそのまま入っていくケースも多いですよ。
やまや:なるほど。いわゆる「居抜き」での出店ですね。
くっつー:はい。物語コーポレーションさん、オフィスも綺麗で、対応も誠実なんですよ。契約もスムーズですし。
やまや:私、担当の方とやり取りしたことありますけど、本当に信頼できる対応でしたね。

焼肉業界では特に「焼肉きんぐ」が全国的に出店攻勢をかけており、駅前やロードサイドなど多様な立地で成功しています。郊外型から都市型への転換をスムーズに進めている点も注目。物語コーポレーションの誠実な企業姿勢も、出店加速を支える大きな要因です。
焼肉業界の構造変化と明暗分かれる出店戦略
やまや:逆に言えば、弱い焼肉店はどんどん閉店しているってことですよね。
くっつー:そうですね。たとえば昔からある大手チェーンの中でも、最近は苦戦しているところがあります。不動産を自社で持っている場合は、そのまま売却するケースもありますね。
やまや:そうそう。昔の「焼肉食べ放題」って、それだけで嬉しかったですけど、今は質や体験が求められる時代になってますね。
くっつー:そういえば、最近は特急レーン型みたいな形も流行ってますよね。近畿のほうでは「焼肉特急」とかですね。寿司の回転レーンを焼肉に応用しているやつ。非接触でスマートだし、コロナ以降すごく伸びました。
やまや:昔はビュッフェ形式で取りに行くスタイルが多かったけど、今は席に届く時代なんですね。

焼肉業界では単なる食べ放題から、体験型・スマート注文方式へと移行が進んでいます。非接触や利便性の向上を重視する消費者のニーズに応える形で、業態が進化しています。また、競争激化により「強い企業だけが生き残る」構造がより顕著になっています。
第4位:シミュレーションゴルフはまだ伸びる?サブスク×無人運営が魅力

ここ数年で一気に出店が加速したシミュレーションゴルフ。無人運営で人件費がかからず、サブスクモデルで安定収益が見込めるという点から、多くのフランチャイズオーナーが参入しています。
2023年頃からの流行に見えつつも、2025年も勢いは衰えていません。
「24時間×無人型」モデルがハイクラス層に刺さる理由
くっつー:第4位はシミュレーションゴルフです。
やまや:2023年ごろに流行った印象ありましたけど、まだ勢いがあるんですね。
くっつー:めちゃくちゃありますよ。むしろ今がピークかも。特に24時間無人型が人気ですね。
やまや:私も覚えてます。最初に契約した案件がそれでしたよね。
くっつー:そう。埼玉で初めて契約した物件がシミュレーションゴルフで思い出深いです。
やまや:無人で24時間って、運営としては効率がいいですよね。
くっつー:はい。従業員が不要で、サブスクで月1万円とかの会員費を取って、200人くらい集めるモデルです。コンビニより少し小さいくらいの広さで始められますし。
やまや:なるほど。人件費も抑えられて利益構造が安定するわけですね。
くっつー:しかも、オーナーがサラリーマンとか経営者の副業で参入しやすいのもあって、店舗数が一気に増えてます。
やまや:確かに無人で副業できるなら、興味持つ人も多そうですね。

シミュレーションゴルフは、24時間営業と無人運営の組み合わせによって、収益性と効率性を両立した注目の業態です。ハイクラス層をターゲットに、月額制のサブスクモデルで安定した売上を確保できることから、個人の副業としても注目されています。
天井高物件の希少性と競合増による今後の展望
やまや:ただ、物件探すときにネックになるのが天井の高さですよね。
くっつー:そうなんです。最低でも2.8m以上は必要ですので、普通のテナントでは難しい場合もあります。
やまや:でも需要は高いと。
くっつー:めちゃくちゃ高いですね。私自身、家の近くにあったゴルフ練習場が潰れたんですけど、代わりにシミュレーションゴルフができたら絶対契約していたと思います(笑)。
やまや:空中階でもやれるし、必ずしも一等地じゃなくても大丈夫ですもんね。
くっつー:そうですね。SNS広告とかX、Instagram広告で集客できるので、立地にこだわる必要もない。
やまや:でも今後、競合が増えすぎるとどうなるんでしょうか?
くっつー:実は、2026年くらいには頭打ちになるかもって思ってます。
やまや:確かに、すでに聞いたことないようなブランドが撤退しているケースも出てきてますし。ブランド力や運営力がないと淘汰されていく時代に入ってますね。
くっつー:そうなんです。最初に出店攻勢をかけた「ステップゴルフ」が強かったんですけど、その後は参入が相次いで一部は撤退も出てきましたね。

出店ハードルの低さから一気に拡大したシミュレーションゴルフ市場ですが、競合の増加により淘汰の流れも見え始めています。特に天井高など設備条件が難しいため、物件選定の戦略やブランド力が生き残りの鍵となります。
第3位:再ブーム到来!24時間フィットネスの多様化が加速中

かつてコロナ禍で苦境に立たされたフィットネス業界。しかし2024年以降、再び出店の波が訪れています。
なかでも24時間営業の無人フィットネスジムは、さまざまな業態で進化を遂げながら多店舗展開を加速中。消費者ニーズに応じた多様化が、業界全体を後押ししています。
エニタイムからchocoZAPまで広がるターゲット別モデル
くっつー:第3位は「24時間フィットネス」です。
やまや:きましたね。これは間違いなく増えてますね。
くっつー:私たちの現場感でも、2025年はすごく仕掛けが多かったですね。契約にも繋がりそうな案件も多数ありました。
やまや:やっぱり代表格は「エニタイムフィットネス」ですか?
くっつー:そうですね。日本で24時間型のスタンダードを作った印象です。コンビニの倍くらいの広さで出店している感じ。
やまや:でも、それを超える面積で勝負している企業も出てきてますよね。
くっつー:ありますね。300㎡以上で勝負しているところもありますし、中にシミュレーションゴルフを併設している複合型のジムもあります。月会費もバラつきありますよね。3,000円台の低価格から、7,000〜8,000円の高価格帯まで。
やまや:それを象徴するのが「chocoZAP」ですね。低価格・無人・セルフエステや脱毛など新しい価値を提案して、今や1,000店舗超え。本当にすごい展開スピードですよね。

24時間フィットネス市場は、ターゲット別に特化することで競争力を高めています。エニタイムのようなスタンダード型から、chocoZAPのような低価格・多機能型まで、利用者の目的やライフスタイルに合わせた多様な展開が特徴です。
女性専用やパーソナルジムなど細分化が進むフィットネス業界
やまや:フィットネスって最近本当に色んなタイプがありますよね。
くっつー:そうなんです。例えば「女性専用ジム」とか、明確にニーズを分けて出店している企業が増えています。
やまや:「カーブス」なんかはその代表ですね。
くっつー:はい、女性が安心して通える空間を提供していますよね。でも今はそれに加えて、自分のペースでできる女性向けの無人ジムも登場してきてます。
やまや:逆に「パーソナルジム」も増えてますよね。1対1で指導してもらうタイプ。
くっつー:そうですね。単価は月3万〜4万円くらいですが、需要はしっかりあります。
やまや:ただ、トレーナー個人に依存するのでチェーン展開しづらいのが課題ですね。
くっつー:確かに。ブランドではなく「人」が商品になるビジネスですもんね。それでもチェーン化に成功しているパーソナルジムも出てきているので、今後もまだまだ注目していきたいですね。
やまや:ニーズがある限り、まだまだ成長は続きそうですね。

フィットネス業界では「女性専用」「パーソナル」「複合型」といった業態の多様化が顕著です。利用者のライフスタイルやニーズに合わせた細やかなサービス提供が、競争力に直結しているのが特徴です。
この記事から学べる5つのポイント

1. 「焼肉きんぐ」に代表される強い企業が二極化する焼肉業界を牽引
焼肉業界では閉店が相次ぐ一方、強い企業が積極的に出店しています。「焼肉きんぐ」は駅前立地でも集客に成功し、居抜き物件を活用した効率的な出店でブランド力をさらに拡大。
物語コーポレーションの誠実な企業姿勢が、その成長を後押ししています。
2. 体験型・非接触スタイルへの移行が進む焼肉業態
「焼肉特急」や「焼肉筋肉」など、回転寿司のレーンを応用した新スタイルが台頭。非接触や利便性を重視する時代に合わせ、焼肉業界は単なる食べ放題から体験型へシフトし、強い企業だけが生き残る構造に変化しています。
3. サブスク×無人運営が生んだシミュレーションゴルフブーム
シミュレーションゴルフは24時間営業と無人運営で低コストを実現し、月額制サブスクで安定収益を確保できるモデル。ハイクラス層や副業オーナーに人気が高く、店舗数が急増しています。
4. 天井高物件確保と競合増が今後の課題に
シミュレーションゴルフの成長には、最低2.8m以上の天井高が必要という物件条件がネックに。競合の増加で一部ブランドが撤退し始めており、2026年以降は淘汰が加速する可能性があります。
戦略的な物件選定とブランド力が鍵です。
5. 24時間フィットネスは多様化が加速し、特化型で差別化
エニタイムフィットネスやchocoZAPなど、ターゲットに合わせた特化型モデルが続々登場。女性専用やパーソナルジムなど業態の細分化が進み、利用者ニーズに合わせた差別化戦略が出店成功のポイントとなっています。